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植樹後の手入れは3年まで(森の作り方04)

木を植えよ!s『木を植えよ!』(宮脇昭著 新潮選書 2006)を教科書に、森を作る学習シリーズの第4回目は《植樹後の手入れ》について。
芝生や街路樹、公園の林などを見ていると、ヒトが植えたものは植えた後の管理とその費用も大変なようです。例えば東京近郊の市所有の公園樹木の管理に数百万円/年もかかるといいます。街路樹の枝落としや落ち葉掃除などもよく目にします。木を植えることは、森でもどこでもその後の管理やコストがそんなに大変なのでしょうか?宮脇さんは、この本のなかで次のように説明しています。

しかし、管理が大変なのは、土地に合わない木や外来種を植えた場合です。たとえば芝生。夏は一週間に一度は刈らなければいけません。芝生の間に砂を撒く作業(目土)も必要です。また、殺虫剤、殺菌剤、除草剤などを使用しなければ維持できません。
ポプラやプラタナスなど根の浅い外来樹種の並木は、台風などで倒れやすいので、毎年のように強度な剪定、落ち葉掻きが必要でしょう。その土地の潜在自然植生が許容する範囲を超えた植物。樹木を植えた場合、このように、永遠に手間とコストがかかるのです。(同書p172)

これに対して、土地本来の森作り、すなわち潜在自然植生に基づく幼木のポット苗を用いて、主木を中心に多くの土地本来の樹種を混植・密植する宮脇方式の場 合だと、手間がかかるのは植樹後三年までで、四〜五年目からは、人間による管理は基本的に不要になるとして、その後の森が成長する様子を次のように記述しています。

今までの経験からいうと、植えて五〜十年くらいは樹木は密生しています。それを見た人たちに、こんなに密に植えたら共倒れするのではないか、とよく言われ ます。しかし生物社会では、競い合い効果で共に育つのが一番健全な状態です。やがて十五〜二十年経つと、生き残った森の主役の高木はどんどん育っていきま す。亜高木はその下で、低木はさらにその下で生育していくのです。樹種の特製に応じて、高木、亜高木、低木、下草の自然の森のシステムが、こうしてできあ がっていきます。枯れた木も林床で落ち葉などとともに分解され、地球資源として、森の発展に寄与します。生物社会では、無駄ということはまったくないので す。(同書p176)

このように、ヒトが勝手に植えた樹木と潜在自然植生に基づいて植樹した、その土地本来の樹木との正反対の性質を、植樹後の手入れでも見ることができます。そして何よりも宮脇さんの上の文章が説得力を備えているのは、実際に日本の様々な場所での成功事例が豊富に載っているからです。

『木を植えよ!』のなかでもダムの切り開かれた斜面、高速 道路脇の斜面、企業の敷地、大学・学校をはじめ、国内外で多くの森を作ってきた経験を紹介しています。植樹前の風景と植樹後の成長した森の写真が対比的に付いているので、大変わかり易く、読み進めると、まるで空き地があれば、 どこでも森は作れるというような想いにかられるようで、読む者に勇気を与えてくれる一冊です。

以上、私の表題に沿って、『木を植えよ!』のページから都合のいい部分だけを脈絡もなく抜き書きをしていますが、本書の全体を通して、私のようなビギナーにも理解しやすい構成になっています。『木を植えよ!』は9つの章から構成されていますので、そのタイトルを列記してみましょう。

  1. 「鎮守の森」は「本物の森」
  2. 日本人と照葉樹林
  3. 人間にはなぜ森が必要か
  4. 日本列島の特徴
  5. 日本人と森
  6. 森をつくる前に
  7. 森のつくり方
  8. 山だけではなく街に森をつくる
  9. 自宅の庭に森をつくろう

最後の第9章《自宅の庭に森をつくろう》という宮脇さんならではの呼びかけに、ぜひとも多くの皆さんと共に応えていきたいものです。

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