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マント群落とソデ群落

鎮守の森潜在自然植生に基づいた多層群落の森は、宮脇昭さんの基本的な概念の一つですが、これを宮脇さんの書物のなかでもう少し細かく見ていこうとすると、例の「高木・亜高木・低木・下草」のほかに表題の《マント群落とソデ群落》という言葉が出て来ます。
このあたりのことを『鎮守の森』(新潮文庫 2007年)では次のようにお話されています。

植物社会では、できるだけ多様で、しかも全体のバランスがとれている外的要因が=環境が一番良い条件である。そういう環境下では、森ができる。森とは木が三本あるだけではない。高木、亜高木、低木、下草、土の中のカビ、バクテリア、ダニ類、いろんな動物がいがみ合いながらも、限られた空間でその種の能力に応じて精いっぱい命をかけて生きている。このように多層群落の森こそもっとも強い自然の表現といえる。(宮脇昭著『鎮守の森』新潮文庫 p33)

と、定義したうえで、では実際の森の姿はと言うと。

こうしてできた森は、草原、水辺などの開放景観に接するところでは、ツル植物や低木などの林縁群落によって囲まれる。これをドイツ語でマンテル・ゲゼルシャフト、そのまま日本語に訳してマント群落という。さらにマント群落の外縁は日本の春先ならばヤエムグラ、そしてヨーロッパにも帰化している白い目立たない花が咲き、実が野生動物について運ばれるヤブジラミという植物などの草本植物で縁どりされる。それをソデ群落という。すなわち、高木、亜高木、低木、下草という立体的な樹木のまわりを水平的にはマント群落、ソデ群落が囲んでいる。(同上 p33-34)

これらマント群落、ソデ群落の模式図を次のページに載せていますので、その図を模写したのが下図になります。まず人為植生の場合から。この模式図のような群落は、郊外の畑と畑の間のわずかな空き地に低木にツル植物がからまったような様子で帯状に続いているのをよく見かけたりします。
人為植生1下図は常緑広葉樹のシラカシ林を例にとった自然植生の場合。


シラカシ—ヤブツバキ群集を囲むように、マント群落とソデ群落が分布していることがわかりますが、問題は、植樹時にはマント群落とソデ群落の苗木などを用意する必要があるのでしょうか?という疑問です。これら二つの群落は後から自然に育ってくるような気がするのですが、どうでしょうか。宮脇さんにお聞きしたいものです。(続く)
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