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人工林の伐採後は潜在自然植生を植える

◎《人工林から潜在自然植生の森へ》の続編です。本来は一回でまとめて書くべきものを私の怠慢のために複数回に分けるハメになってしまいました。

人工林の放置による弊害を指摘し、その深刻さを訴えることは簡単ですが、ではこの問題を解決に向かわせる糸口はあるのでしょうか。その一つに針葉樹と広葉樹の混合林をつくる《針広混交林化》があります。これは針葉樹の森を帯状または群状に伐採するなどして、その跡地に広葉樹林を天然更新により生育させ、針葉樹と広葉樹の混合林をつくろうと言うものです。 この《針広混交林化》の課題は、天然更新と言うもっぱら自然のサイクルに頼るため(ヒトの感覚からすると)時間がかかることと、何よりも伐採後の林床にどれだけの種類の、どれだけの数の樹種があるのか予測できないことがことにあります。管理放棄のために貧弱になった林床の針葉樹跡地には広葉樹の実生幼苗や埋土種子が必ず多くあるとは限りませんし、鳥や動物、風による種子の散布数にいたっては偶然に頼るしかないのが実情でしょう。

そこで、宮脇昭さんの《潜在自然植生の樹種の昆植・密植》=《宮脇方式》の登場です。広葉樹林への天然更新ではなく、人工林を伐採したら、その土地本来の潜在自然植生にこだわった高木—亜高木—低木—草本で構成される多層群落の樹種をヒトの手で植えていくというものです。ここで、厳密に言えば天然更新とは少し違うのかも知れませんが、伐採後、人為的な影響を止めてしまうと土地は本来の植生=潜在自然植生に向かって徐々に変化していくことになり、これを《遷移(二次遷移)》というのだそうです。

◎照葉樹林帯における二次遷移
二次遷移

※ 宮脇昭著『いのちの森を生む』(NHK出版 2006年)p64-65からの模写

森の力この自然のサイクルにまかせて「いまのマツ・スギ・ヒノキ全盛の日本列島でも人の手をまったく加えずに二〇○〜三○○年も経てば、その土地本来の照葉樹林(常緑広葉樹林)や落葉(夏緑)広葉樹林(北海道、東北北部、本州の大部分と四国・九州の海抜八○○メートルから一六○○メートルまでの山地)になるでしょう。」(宮脇昭著『森の力 植物生態学者の理論と実践』講談社現代新書 2013年)そこで、この遷移(二次遷移)と《潜在自然植生の樹種の昆植・密植》=《宮脇方式》を比較した図表が上記の本『森の力 植物生態学者の理論と実践』(p123)にありましたので、一部を略して書き写してみました。

◎二次遷移方式と伐採後20〜30年で強い常緑樹林をつくる宮脇方式との比較

宮脇方式

上の比較図を見ると、自然のサイクルにまかせる二次遷移(または天然更新)では、常緑樹林を形成するのに200〜300年を要するのに対して、宮脇さんの推奨する潜在自然植生の樹種の幼苗を植える方法だと1/10に短縮したわずか20〜30年で「限りなく自然に近い森林と豊かな土壌生物」に育まれた状態をつくることができる訳です。この宮脇方式こそ、今の丹沢の森を再生する最適な方法ではないでしょうか。実際、宮脇さんの著作のなかには日本はもちろん、世界中での多くの実証例が写真付きで掲載されており、それらの写真に写っているこんもりと繁った、いかにも活力のありそうな森の状態には感動すら覚えるほどです。

(この項未完につき、このまま《針葉樹を伐採する費用を調べてみる》に続きます。)

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