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潜在自然植生の保全林(1)

横浜01先日の備忘録《横浜の潜在自然植生の森》で、宮脇さんが彼の著作のなかで紹介されている神奈川県下で植栽された宮脇方式による5カ所の防災・環境保全林をリストアップしましたが、今日はその中のひとつ《横浜市北部第二下水処理場》に行って、実際に林の様子を見学してきました。

《横浜市北部第二下水処理場》は横浜市東部を流れる鶴見川が東京湾に注ぎ込む、ちょうど河口の両側に拡がる埋め立て地の一角にある広大な施設で、私が目指したこの施設の環境保全林は、施設とそれに沿って伸びる道路を区別するように、境界をまっすぐに貫いて1km以上にわたって緑のベルトを形成していました。係の方の(電話での)説明によると、この処理場が1983年にできたその直後に植樹したので、今年で30年ほどになるとのことです。

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この二枚の写真は環境保全林を施設内から撮ったもの(左)と施設に沿った道路側から撮ったもの(右)ですが、写真でも確認できるように、樹林帯の幅は決して広いものではなく、タマゴ型に盛られた高さ50cmほどのマウンドの横幅は4mほどの狭いものです。但し、左右の空間にせり出した勢いのありそうな枝葉はそれぞれマウンドと同じような長さで伸びており、特に道路側ではその一部を切り取られているほどでした。

横浜012また、右の写真に見るように、昆植・密植による植栽法のため、30年後の現在でも樹林が所狭しと密集して上に伸びているのがわかります。樹高は5階建てのビルに届きそうな勢いで、樹種はシラカシ、タブノキそしてクスノキを主木にヤマモモ、カクレミノ、トベラなどが確認でき、総数17,000本に達するそうです。

そこでこの景観を見て最初に驚いたのは、樹木の密度が80年の時間が経過した明治神宮の森とはまったく違っていて、明治神宮の森の高木がおよそ5m×5mに1本ほどの間隔で並んでいるのに対して、この環境保全林は、樹木の幹の太さには大きなバラツキが見られるのですが、4m幅に4本(つまり1m×1mに1本)の割合で生き残っているように思えました。

この差異は、明治神宮の植樹が主に全国から寄進された針葉樹を含む(苗木ではなく)成長した樹木だったために、間隔を拡げて植栽する方法を採ったことによるものなのでしょうか。

念のために、一番下の写真に1㎡単位の黄色い線で升目を入れてみたのですが、この4本の常緑広葉樹の将来を占ってみると、右から二番目のシラカシだけはそのうち競争に敗れ朽ちてしまい、他の3本は無事に生き残り百年後も、四季を通して豊かな緑の景観を見せてくれるのでしょうか。

最後に付け加えると、低木や草本の類いがこの環境保全林には見当たらず、期待していたマント群落・ソデ群落を観察できなかったのですが、林縁を裾模様に覆ってくれるというこれらの群落は、もっと幅の広い本格的な潜在自然植生の森でないと、見られないのかもしれません。

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