丹沢の病い8/10=水質の汚染

丹沢の病いシリーズの8回目ですが、今回は個人的にも関心が高い《丹沢の水》について。
随分前のことですが、富士山の伏流水に大腸菌が含まれていることがニュースに取り上げられたことがあります。それまでは、富士山の湧き水は300年ほど昔に降った雨水が濾過されたものと聞きかじっていたのですが、どうやら数十年で地上に現れるというのが正しいようですね。もっとも、番組ではこれが人為的行為によるものかどうかはわからないと即断するのは避けていましたが、富士山の斜面に現われる「白い川」を知るものにとっては、水という自然の象徴がヒトの行為によってその普遍性を破壊されたような、「水よ、おまえもか?!」と気分の悪い思いをした覚えがあります。

そこで、丹沢山系の水質についてですが、丹沢大山総合調査学術報告書(2007年)では次のように言っています。

大山南面の3河川について行われた水生昆虫の群集構造の比較調査では、上流部でも有機物排水の放出口がある鈴川では汚濁耐性種が出現し、多様性指数も減少 していた。利用動態調査の結果によると、自動車による入山者がデイキャンプを行うことが増加傾向にあり、キャンプ場の多い早戸川水系、道志川水系などで、 今後は上流部であっても水質汚染が進んでいく可能性が高い。(第1章  背景と調査計画 第1節  丹沢大山自然環境総合調査(1995)と丹沢大山保全計画」p4)

このわずか数行で終わる簡素な報告書の裏側には、実に解決困難な問題が多く、重く横たわっていることに触れない訳にはいきません。神奈川県のウェブサイト《丹沢大山保全計画の実施状況》のオーバーユースによるゴミやし尿等の対策の項目では、ボランティアの皆様によるゴミの回収や山岳公衆トイレの設置・改修等の実施をならべています。

また、キャンプなどによる水質汚濁や河原等の荒廃の防止では、実現には至りませんでしたが、キャンプ等の制限の試みや公園利用者に対するフィールドマナーの徹底を図ることを進めているとのことです。

以上のような提言を読むと、植樹事業のような一人でもできて、すぐに効果が確認できるレベルとは異なり、政策レベルとかモラルのレベルの課題となり、私は前回のテーマ《生物相の人為的な錯乱》と同じようなことを書くしかないようです。

当然で常識的な範疇になりますが、ヒトのネガティブな行為を諌めると共に、一歩進んで「都市生活者」としての丹沢の自然に対するよりポジティブで俯瞰的な関わりを説いています。これからも丹沢に関わろうとする一人の忘備録として常に持ち続けなければなりません。

line