神奈川に残る鎮守の森(3/5)

神奈川県下の社寺林199 カ所を調査した結果、10種類の群集+1群落が確認され、その報告書から抜粋した内訳を該当する社寺名とともに以下に列記します。

※ 下地図は11の群集・群落を持つ40の社寺の所在地マップ。具体的な社寺名は、それぞれの群集・群落の「該当社寺」をご参照ください。

1)ヤブコウジースダジイ群集

  • 常緑広葉樹のスダジイが優占する高木林。神奈川県下の社寺林として広く各地に生育が見られる自然植生の一つ。
  • 海岸に比較的近い海抜300m以下の低海抜地で土壌の蓄積が浅い尾根部や凸状斜面を中心に拡がっている。
  • 東海地方以東の臨海域に拡がるスダジイ林の大部分が含まれ、河川などに沿って、より内陸まで育成域を拡げている。
  • 斜面保全林、立地保全林としての性格が強い。従って、自然環境の維持、斜面などの立地、災害防止林としても期待される。

多層群落の構成

  • 高木:スダジイ
  • 低木:アオキ、ヤブツバキ、モチノキ、シロダモ、イヌビワ、ヒサカキ、ヤブニッケイ、ネズミモチ、
  • 草本:テイカカズラ、ヤブコウジ、ビナンカズラ、ヤツデ、ジャノヒゲ、ベニシダ、ヤブラン

該当社寺
ヤブコウジースダジイ群集の社寺

2)ホソバカナワラビースダジイ群集

  • スダジイ、タブノキが優占する常緑広葉樹の高木林。林床には常緑のシダ植物であるホソバカナワラビが特徴的に繁茂する。
  • 比較的水分条件に恵まれた谷あいやテラス状の緩傾斜地、斜面下端付近に生育域を持つ。従って、神奈川県下ので拡がりは限られる。

多層群落の構成

  • 高木:スダジイ、タブノキ
  • 低木:モチノキ、アオキ、ヤブツバキ、シロダモ、イヌビワ、ヒメユズリハ、トベラ、ヤブニッケイ、アオキ、モチノキ、ヒサカキ、ヤブニッケイ、ネ ズミモチ、
  • 草本:イタビカズラ、テイカカズラ、ホソバカナワラビ

該当社寺

3)イノデータブノキ群集

  • タブノキが優占する常緑広葉樹の高木林。県下の沖積地あるいは台地斜面下部で生育。
  • 林冠を広く被うタブノキは神社林の主樹木とされ、保護されてきた。
  • イノデータブノキ群集は、神奈川県下に残されたヤブツバキクラスの常緑広葉樹の中では最 も温暖で湿潤な立地に安定した森林を発達させるものである。
  • 神奈川県にとどまらず、広く常緑広葉樹林帯沿海部一帯の社寺林の基本的な位置占めている。

多層群落の構成

  • 高木:タブノキ、ケヤキ、(スダジイ)
  • 低木:モチノキ、アオキ、イヌビワ、ヤツデ、ヒサカキ、トベラ、モチノキ
  • 草本:ジャノヒゲ、キヅタ、ベニシダ、ヤブラン、イノデ、テイカカズラ、ヤブコウジ

該当社寺

4)モクレイシータブノキ群集

  • 大部分は3)イノデータブノキ群集と共通種。
  • 神奈川県下でも、西端にある大磯町で得られるにとどまる。

多層群落の構成

  • 高木:タブノキ、ミズキ、カゴノキ
  • 低木:アオキ、シロダモ、イヌビワ、ヒサカキ、モクレイシ
  • 草本:キヅタ、ジャノヒゲ、カラタチバナ、サイハイラン、ヤブコウジ

該当社寺

5)マサキートベラ群集

  • 神奈川県下の海岸線沿いの直接海に面した風衝地に生育する常緑広葉樹の低木林である。
  • 海からの塩分を含んだ強い風をまともに受けるため、スダジイ、タブノキなどの高木が優占する常緑広葉樹の成立が困難な極端な立地に生育する。

多層群落の構成

  • 高木:クロマツ
  • 低木:トベラ、ヤブニッケイ、イヌビワ、オオバグミ、マサキ
  • 草本:ツワブキ、キヅタ、ヤブラン

該当社寺:小坪寺(逗子市)

6)シラカシ群集

  • 常緑広葉樹のシラカシが特徴的に高木層に生育するヤブツバキクラス林。それぞれの亜群集により、モミ、シラカシ、ケヤキなど優占種が異なる。
  • ローム層に被われた内陸側の台地および台地斜面を中心に広い面積を占める(潜在)自然植生である。
  • 現在でも、多摩丘陵、相模原台地、大磯丘陵の一部などにある社寺林の多くがシラカシ群集およびその断片的林分である。

多層群落の構成

  • 高木:シラカシ、モミ、ケヤキ、アラカシ、アカガシ
  • 低木:ヤブツバキ、アオキ、ヒサカキ、シロダモ、ヤブニッケイ、ネズミモチ、チャノキ
  • 草本:ジャノヒゲ、キヅタ、ベニシダ、ヤブラン、ヤブコウジ、ビナンカズラ、

該当社寺

7)イロハモミジーケヤキ群集

  • ヤブツバキクラスの夏緑広葉樹渓谷林。育成域は数、面積ともに少ない。

多層群落の構成

  • 高木:ケヤキ、イロハモミジ、カヤ
  • 低木:ヤブニッケイ、アオキ、ウグイスカズラ、ヒイラギ、サンショウ、
  • 草本:ジュズネノキ、フウトウカズラ、キヅタ、テイカカズラ、キチジョウソウ

該当社寺

8)コクサギーケヤキ群集

  • 関東地方のヤブツバキクラス域に生息する夏緑広葉樹林。
  • 構成種にはアオキ、ヒサカキ、チャノキ、アラカシ、ジャノヒゲ、ベニシダ、ヤブラン、ヤブコウジなどヤブツバキクラスにまとめられる常緑植物が多く混生している。

多層群落の構成

  • 高木:ケヤキ、ミズキ、アラカシ
  • 低木:アオキ、ヒサカキ、チャノキ
  • 草本:ニリンソウ、ムラサキケマン、ジャノヒゲ、キヅタ、ベニシダ、ヤブラン、ヤブコウジ

該当社寺

9)シキミーモミ群集

  • 神奈川県下の丹沢山塊で海抜400〜800m付近の尾根筋、斜面上部等に生育域を持つ自然植生
  • 丹沢大山、札掛に天然記念物として保護された残存林分 が見られる。
  • モミノキは社寺林のシンボル的な樹木として保護されてきた歴史がある。しかし、都市の発達とともに、単木的に生育していたモミは枯死した例が多い。
  • 神奈川県下でのヤブツバキクラス域でも、最も高海抜地、貧養立地に育成域を持つ。

多層群落の構成

  • 高木:モミ、アカガシ、ウラジロガシ、カヤ、イヌブナ
  • 低木:ヒサカキ、アオキ、マルバウツギ、ウラジロガシ、アラカシ
  • 草本:ヤブコウジ、テイカカズラ、カンアオイ、マメヅタ、コアカソ

該当社寺:大山阿夫利神社(伊勢原市)

10)アラカシーウラジロガシ群落

  • 神奈川県下の海抜400〜800m付近の急傾斜地、岩盤地、土壌堆積のほとんど見られない立地を中心に生育する自然植生、潜在自然植生であり、今では残存例が少ない。

多層群落の構成

  • 高木:ウラジロガシ、アラカシ
  • 低木:アラカシ、ヤブツバキ、アオキ、ヒサカキ、シキミ、ナンテン
  • 草本:ベニシダ、キチジュウソウ

該当社寺:紹太寺(小田原市)

11)ヤマボウシーブナ群集

  • 箱根山地、丹沢大山山塊の標高800m以上の尾根、斜面に生育。
  • 火山性の箱根と変成岩起源の丹沢とでは立地条件が異なるため、それぞれの立地に対応した下 位群落が多く見られる。
  • 神奈川県下では社寺林のほとんどが標高800m以下のヤブツバキクラス域に集中し、ブナクラス域の社寺林は大山神社の山頂と箱根神 社の二カ所に限られる。

多層群落の構成

  • 高木:ヒメシャラ
  • 低木:マメザクラ、ヤマモミジ、ニシキウツギ
  • 草本:シキミ、フッキソウ、ツルマサキ、ハコネダケ、

該当社寺

◎《神奈川に残る鎮守の森(4/5)》に続きます。line