MENU

森の再来

《森の再来》のページは、この一年余り私は海に面した大きな公園の花壇や樹木管理のお手伝いをしてきましたが、そこで気付いた二つの興味深いことがあり、この二つの課題を少し掘り下げてみようという思いから生まれたものです。

その一つは、都市型の公園はそのほとんどが人工的な植生で占められていますが、その人工度が高ければ高いほど、人手や費やすコストも高くなる傾向があること。

公園には、花壇やどれもミニチュアのスケールでしかないのですが、多彩な植生の樹林帯が配置されています。もっとも手間のかかる花壇を人工度200%の最右翼とすれば、その横には野山の花や草本を人為的に集めたゾーン、その次は落葉広葉樹林、更に常緑と落葉の混交林と次第に管理にかかる手間もコストも減ってきて、最後に市の担当者が「これは自然の植生にもっとも近い樹林帯です」と紹介する一年中深緑の色を見せてくれる常緑広葉樹林にいたっては、基本的に人手もコストもかけることはありません。何故だか、お判りでしょうか。

二つ目は、土のなかのダニやミミズ、ダンゴ虫など《土壌生物》の数や種類の大きな違い。

人工度200%の花壇は《土壌生物》にとっては死の世界であり、そこを移植ゴテで掘り返してもせいぜい出てくるのは、駆除しないといけない害虫=カタツムリだけ。ところが、落葉広葉樹林→混交林→常緑広葉樹林と順を追うごとに土は湿り気を帯び《土壌生物》の種類も数も増えてきます。常緑広葉樹にいたっては土壌を掘り返すと、数多くのダニやミミズ、ダンゴ虫などがビックリした様子で顔を出し、かえって私の方がその豊饒さにビックリしてしまうほどです。このことは、何を意味しているのでしょうか。

ここに、森を進行する荒廃から救出し再生する手がかりにもなるひとつのヒントがあるようです。

潜在自然植生が育つ10年の森を観る

npo法人国際ふるさとの森づくり協会(renafo)が主催する《10年の森を観る》ツアーの参加報告。
三浦半島にある湘南国際村で10年間にわたって潜在自然植生による植樹活動=ふるさとの森づくりを続けているrenafoには私も5年ほど前から参加していますが、このツアーは年ごとに成長し10年も経つと森の基本形を見せるようになる植栽地を順に観察しようというもの。

改めて、《潜在自然植生》としての常緑広葉樹の成長ぶりを身をもって楽しむことができます。

森の黄金比率を解いてみる

このように、何か大風呂敷を広げるかのようなタイトルを付けると、必ず収拾がつかなくなり中途半端な未完のままに終わってしまうという事例です。

私は、人工林:雑木林:潜在自然植生の森=1:1:1 にできればいいのにと、言いたかったようです。

筑波山に拡がる針広混交林と森の未来

茨城のNPO法人 地球の緑を育てる会は筑波山神社とのコラボで、筑波山神社がある筑波山の中腹に拡がる荒廃したスギ・ヒノキの人工林をこの地の《潜在自然植生》である常緑広葉樹林に変え、豊かな生態系を持った緑を再生しようと2006年から植樹活動を毎年行っています。現場からの報告です。

常緑広葉樹は未来と戦う

2017年10月頃の、この筆者がたどり着いた到達点をまとめようと試みたもの。
人工林が人工林である限り、雑木林が雑木林である限り、そこには人手とコストを要し、
おまけに、これまで森が備えていた多面的な機能も失われてしまうこと。
そして、これら処方箋としての《潜在自然植生》による森の再生を訴求しています。

森の保存と森の保全を比べてみる(補足)

下の備忘録《森の保存と森の保全を比べてみる》の続編です。

森の保存と森の保全を比べてみる

まだ、私が森の緑についてナイーブだった頃、ある生態学者が「森の保存と保全は相対立する概念である」と言ったことに衝撃を受け、それ以降は森の緑に対する視線が180度変わったことの回想話。

樹木をめぐる冒険

たまにあることですが、何でこんなことを書いてしまったのか?
記憶を辿っても、なかなかその真相を見つけることができないというような内容の、ちょっとした備忘録。

宮脇昭編著《神奈川県の潜在自然植生》を読む04

宮脇昭さんの『神奈川県の潜在自然植生』(1976年刊)を読んでみる備忘録の4回目。
これまで3回まではカテゴリー《森の発見》に入っていたはずですが、
どういう訳か今回は《森の再来》にきています。

畑を自然に還すという試み

埼玉・秩父地方の谷間の村で農業を営む夫婦が、
農地をたたみ土地を自然に返し、この山村を通りかかる人に喜んでもらおうと
四季を彩ってくれる様々な種類の花木を植える様子を撮った
nhkBS《秩父山中 花のあとさき—ムツばあさんのいない春》の紹介です。

植生トレンド考2:tv番組《縮小ニッポンの衝撃》から植生の近未来を考えてみる

これもnhkの番組を紹介したもの。減少に転じた日本の総人口。一極集中が進む東京でも、五輪開催の2020年に減少に転じると予測されています。私たちにはどんな未来が待っているのか、日本の森の行方に焦点を当てて考えてみます。

気象災害と森林植生

近年、山や森が関わる豪雨などによる自然災害の映像を見ていると、スギやヒノキの流木が濁流とともに家屋を襲ってくる事例が多くなったような気がします。この新しいタイプの被害が主に人工林の管理不足が招いた森の荒廃によるものなのか、と問題意識を持ったまではよかったのですが、チカラ不足のため例によって未完となっています。

《潜在自然植生》備忘メモの2年間と3年目

とりとめもなく2015年に始まった、森の植生についての私の備忘録ですが、2015-2016の一年間の内容を振り返ってみて、何とか合格点を獲得していそうなもの6点をピックアップしてみた私の独りよがりな自選集。

森林・林業白書と百年の計
森林・林業白書と百年の計(補足)

かつて国を挙げて進められた人工林造林政策は森林の4割をスギ・ヒノキ林にしてしまい、今日では大きな負の森状態になっています。林野庁の《森林・林業白書》(2015年度版)を批判的に取り上げてみました。

広葉樹林整備マニュアルを読む
広葉樹林整備マニュアルを読む2
広葉樹林整備マニュアルを読む3
広葉樹林整備マニュアルを読む4
広葉樹林整備マニュアルを読む5
広葉樹林整備マニュアルを読む6
広葉樹林整備マニュアルを読む7

神奈川県の森林行政とりわけ水源林を保全・再生し、県民においしい水道水を届けることを旨とする施策は全国でもトップクラスの水準にあると言われています。具体的には、水源涵養をはじめとして土壌保全、生物多様性などの森の多面的機能を実現することを神奈川県は長期的・短期的の両方から目指しているのですが、水源林を保全するために現場での作業はどのように行われているのでしょうか。

ここにある神奈川県が作成した《広葉樹林整備マニュアル》は、広葉樹の水源林を整備あるいは再生するための基本的な作業のアプローチを定めたものです。広葉樹には落葉と常緑の二つのタイプがあり、当然それぞれについて語っているものだとページを開いてみると、ビックリ仰天してしまいます。

冒頭には「常緑広葉樹は林内が暗いため、水源林には適さない」とあり、入り口で常緑広葉樹は水源林から除外されているのでした。水源林に求められる水源涵養・土壌保全・豊かな生態系を育む生物多様性などの機能が常緑広葉樹林には欠けていると言っているようです。

では、その7〜8割が常緑広葉樹で占められ東京の真ん中で《奇跡の森》とも呼ばれる自然の森を作ってしまった明治神宮の森には、水源涵養・土壌保全・豊かな生態系を育む生物多様性などは備わっていないのでしょうか。事実はまったくその逆であることを始点に、県の《広葉樹林整備マニュアル》を6回に分けて批判的に取り上げています。

作り方ガイド(基本編)もくじ