高丸山千年の森の試み(3)

また今度も一回で終わるはずのものが、私の怠惰と無努力のためにダラダラと続いています。この稿全体が私の単なる忘備録とはいえ、私が勝手に机上にのせてしまった多くのウェブサイトには失礼にならないよう、しっかりしないといけませぬ。

3.神戸の六甲山の潜在自然植生を参考にしてみる

徳島の高丸山に近く、同じような植生が予想できる山の一つに瀬戸内海をはさんだ兵庫県の六甲山があります。この山にも高丸山と同様に(その規模はわずかですが)夏緑(落葉)広葉樹林を持っています。そこで、六甲山の潜在自然植生がわかれば、高丸山のそれもおおよその推測が可能ではないかと思った次第です。

六甲山系電子植生図鑑
発見!ナイスなウェブサイト》で高丸山千年の森と共に紹介した《六甲山系電子植生図鑑》は前回の(2)でも触れたように、宮脇式の潜在自然植生の概念を取り入れ、これを基に六甲山の植生を自然林・二次林・人工林に大別した上で、それぞれの林性下に展開する群集を高木—亜高木—低木—草木の多層群落に落とし込み、詳細&わかりやすく教えてくれるウェブサイト植生図鑑。TOPページには次のような挨拶文を載せています。

ふだんなにげなく見ている六甲山。その風景や自然は、私たちの心を癒してくれるふるさとの景色であり、身近な憩いの空間です。その風景を作り出しているのは、四季を彩る森や樹木たちであり、森や樹木のことをよく知ると、六甲山の自然の成り立ちや状態などが見えてきます。

この「六甲山系電子植生図鑑」は、六甲山の植生、自然を理解する、また、より興味を持ってもらえるように作成しました。最新の植生調査結果を基に、 植生の成り立ちや分布について解説しました。また、植生を区分するために必要な六甲山の樹木の見分け方や特徴について、解説しました。その他、「植生物 語」として、六甲山の植生の移り変わり、などについても解説しましたので、読み物としてもお楽しみ下さい。

さっそく六甲山の自然林をみてみましょう。《六甲山系電子植生図鑑》によると、ここには下記の3種類の群集と1種類の群落の植生が報告されています。

  1. ブナ-シラキ群集
  2. ウラジロガシ-サカキ群集
  3. コジイ-カナメモチ群集
  4. アカマツ-ハナゴケ群落

六甲山にも夏緑広葉樹林としてのブナ林が高海抜域にごくわずかに《ブナ—シラキ群集》として残っているようです。この林の構成種によって、六甲山の植物の種類がより豊かなものとなっていると書かれていることに留意すべきだと思います。次に《ブナ—シラキ群集》を構成する多層群落の樹種は、というと以下の樹種構成になっています。(色は高丸山と同樹種の高木)

  • 高木層:ブナ、イヌブナ
  • 低木層:コハウチワカエデ、オオカメノキ、ユキグニ、ミツバツツジなど
  • 草本層:スズタケ、コカンスゲ、オオイワカガミなど

4.ついでに丹沢大山の潜在自然植生を参考にしてみる

更にここ丹沢の植生とも比較してみましょう。丹沢の《コカンスゲ—ツガ群集》は丹沢山地のブナクラス域(800〜1,400m)の下部で見られる群集で下記のような樹種で構成されています。

  • 高木層:夏期広葉樹(ブナ、イヌブナ、クマシデ、アカシデ
    常緑広葉樹(ウラジロガシ、アカガシ)
    常緑針葉樹(ツガモミ
  • 亜高木層:イヌブナ、サワシバ、オオモミジ、ウラガシロ、アカガシ、カヤ
  • 低木層:高木層の幼樹、ムラサキシキブ、コバノガマズミ、ミツバツツジ、ツクバネウツギ、    ヤブムラサキ、アブラチャンなど
  • 草本層:スズタケ、コカンスゲなど

また、丹沢の標高1,400m付近を境界に下部に《ヤマボウシ—ブナ群集》、その上部には《オオモミジガサ—ブナ群集》が発達することが確認されています。標高1,438mの高丸山は丹沢山系とほぼ同じ緯度に位置し、低地は両方とも常緑広葉樹林帯(ヤブツバキクラス域)にあることから、参考までに丹沢の《ヤマボウシ—ブナ群集》の植生を以下に並べてみました。

 

  • 高木層:ブナシナノキヨグソミネバリイヌシデ、クマシデ、ミズキ
  • 亜高木層:アオダモ、ヤマボウシ、リョウブ、ブナ、 シナノキ、 クマシデ
  • 低木層:トウゴクミツバツツジ、サラサドウダン、 シロヤシオ、 アセビなどのツツジ科低木    やツクバネウツギ、 コミネカエデ、オオモミジ、カマツカ、ヤマボウシ、マメザク     ラ、オオミヤマガマズミ
  • 草本層:スズダケ、クワガタソウ、モミジイチゴ、ヘビノネゴザ、 ヒメカンスゲ、イワガラ     ミ、ヒメノガリヤス

以上、六甲山の《ブナ—シラキ群集》、丹沢の《コカンスゲ—ツガ群集》および《ヤマボウシ—ブナ群集》の三つの群集と高丸山で植栽された高木・亜高木の類似性をみると、丹沢の《ヤマボウシ—ブナ群集》が比較的高いように思えます。このことから、今後高丸山での自然林再生のための植樹を実施する場合には、《ヤマボウシ—ブナ群集》を基準に高木—亜高木—低木—草本の多層群落を構成する樹種の植栽を考えてみるのも、一つの方法であると思われます。

◎《高丸山千年の森の試み(4)》に続きます。 line