《徳島県高丸山千年の試み(1)》の続編である二回目は、ここでの植樹プロジェクトについて、
- 選定された23の植栽樹種を高木—亜高木—低木—草本の多層群落として捉えてみる。
- これらの多層群落を、潜在自然植生の群集・群落へ置き換えてみる。
- これらの樹種の植栽密度を《宮脇式昆植・密植モデル》と比較してみる。
以上の三つを課題に、徳島の高丸山での試みを紹介します。
1.23の植栽樹種と多層群落
左はpdf資料《上勝町の事例》から抜粋した徳島県高丸山の植栽プロジェクトで使用する植栽樹種の一覧ですが、そのほとんどが高木で占められています。宮脇さんの潜在自然植生の考え方からすると、自然林の再生を目的とする場合、高木だけの植樹はその趣旨からかけ離れているように思えますが、資料ではその意図を次のように説明しています。
「復元目標とする森林の骨格をなす高木種のみを植栽し、低木種については、高木種の成長とともに、あるいは成長後の自然な侵入にまかす、ということを前提とした。」(資料p10-11)
つまり、多層群落の構成には欠かせない他の亜高木—低木—草木の生育は「自然な侵入にまかす」ために、左の表のような樹種の組み合わせで、各ゾーンに6〜10種の高木だけを植栽しているとのことです。
また、高木の種類も針葉樹のモミ、ツガそして常緑高木のシキミを除けばすべて夏緑(落葉)広葉樹で占められています。標高1,438mの高丸山は宮脇昭さんの日本列島の潜在自然植生図(『森の力 植物生態学者の理論と実践』2013 講談社現代新書 p69)によると、800〜1,000m以上の高標高域では太平洋型夏緑広葉樹林帯(シラキ—ブナ群集他)に、低標高域だと常緑広葉樹林帯(シラカシ群集、シキミ—モミ群集他)に、それぞれ該当するようです。
高丸山千年の森プロジェクトのウェブサイトには標高の詳細な記述がなく、勝手に推測するしかありませんが、ほとんどが夏緑(落葉)広葉樹であることから、植栽域の4つのゾーンは標高が高い太平洋型夏緑広葉樹林帯(シラキ—ブナ群集他)に相当するのでしょうか。
2.高丸山の潜在自然植生を推理する
いよいよ大胆にも、潜在自然植生からみた高丸山の群集・群落およびその多層群落構成の推理に入る訳ですが、ここで参考になると思われるのが《発見!ナイスなウェブサイト》で高丸山千年の森と共に紹介した《六甲山系電子植生図鑑》です。このウェブサイトは神戸を見下ろす標高931mの六甲山の植生を網羅的に調査し、その成果を多面的な視点から詳細に紹介したものですが、特に興味深い点は、全体を潜在自然植生の概念で貫いていることです。これにより極めて説得力のある、思わずフム、フムと頷いてしまわずにはいられないような、わかりやすい内容になっているという訳です。
◎《高丸山千年の森の試み(3)》に続きます。