高丸山千年の森の試み(1)

2014年11月14日の備忘録《発見!ナイスなウェブサイト》で紹介させていただいた徳島県立高丸山千年の森プロジェクトは「森に親しみ、森に学び、森を育てる」コンセプトにした森づくりのための活動を広く徳島の皆様にPRするためのものですが、私にとって大変参考になるpdf資料がこのなかに研究論文の紹介として置かれていました。この資料の、特に植生樹種の選定とその植栽に関わる箇所を拾い出し、以下に数回にわけて事例として紹介したいと思います。pdfのタイトルは《上勝町の事例》。著者は鎌田磨人さん(徳島大学大学院ソシオテクノサイエンス研究部エコシステムデザイン部門)とあります。

徳島高丸山2
● 高丸山千年の森の二つの森づくり

  1. バイオマス資源を利用する生産材としての森林育成
  2. 生物多様性を実現する自然の森づくり

丸山千年の森では、人工林を長伐期大径木の森として育成・保全することを考えており、自然林と併せて二種類の森づくりを行っています。あくまでも人工林の森を育成するという姿勢は《丹沢の森をビジネスで再生する》私の事業コンセプトにはなく、ここが大きく異なるところです。

● 二つの森づくりの経験度

  1. 生産材としての森林育成は経験が蓄積されており、高度な技術力を持っている
  2. 自然の森の再生は技術が確立している訳ではない。その地域の人びととの関係の構築も課題

丸山千年の森での自然の森再生のための植栽プロジェクト(上記の2)には、その土地本来の群落を推し量るという宮脇式の基本的な考え方《潜在自然植生》を採用していないため(私から見ると)ゴールに到着するまでには紆余曲折があるようです。加えて市民ボランティアによる作業も加わるため、その植栽等の実施プロセスにはビジネスライクなスムーズさとはまた別の煩雑さも生じています。

自然の森にも二つのタイプ

  1. 里山林(二次林):人の日常的な利用によって維持・管理される。継続的な伐採や刈り取りが必須となる。
  2. 自然林(極相林):人為的な影響を受けず、自然攪乱による更新

里山林はかつて第一次産業の場として、薪や炭の材料としてのコナラ、クヌギ、アカマツを植栽し、これらを10〜30年ごとに伐採する明るい林。ここに明るい場所が好きなスミレ類、カタクリ、シュンラン、ツツジ類など多くの樹種がみられます。丸山千年の森のプロジェクトには、人工林と同じように、里山(二次林)の育成・保存も行っており、これも《丹沢の森をビジネスで再生する》私の事業プランにはないものです。

再生事業計画の四つのコンセプト

  1. 広域的な視点から生態系の質やその分布状況を判断する。
  2. 再生事業を行うべき場所の優先順位を決めるための方法論(手法)の確立。
  3. 個々の場で(森の種類により異なってくる)再生目標とする生態系の構造や目標を設定。
  4. 事業を地域とどう関連付けられるか、関係性の具体的な設定。

人工林、里山、自然遷移による自然林再生、植栽による自然林再生と4種類の森林再生事業を総合的に推し進める丸山千年の森のプロジェクトでは、上記の4つのコンセプトを設定。複雑で多義にわたる再生手順をルール化しようとしています。例えば、《丹沢の森をビジネスで再生する》事業とも重なる植栽プロジェクトについては次のようなことを手順書にまとめようとしています。

a)モデルとなる残存自然林および植栽予定地である採伐跡地での植生調査および(尾根・斜面・谷などの)地形区分を行い、それぞれの区分に対応する樹種群を見い出した上で、伐採跡地を地形区分してゾーニングし、植栽計画(空間配置・植栽密度等)を策定する。

b)遺伝子攪乱を防ぐため、植栽予定地周辺に自制する樹種以外は採用しない。

c)そのため、種子採取→な駅づくりを一貫した管理のもとに運営する。

上記のb)c)はまったくその通りで、a)の植栽計画についてはその詳細を次のように記述しています。

徳島高丸山樹種以上の検討結果を踏まえて、伐採跡地に植栽する樹種を、次のようにして決定した。まず、伐採跡地周辺の自然林に自生する種であること、そして、復元目標とする森林の骨格をなす高木種のみを植栽し、低木種については、高木種の成長とともに、あるいは成長後の自然な侵入にまかす、ということを前提とした。そのため、まずは、モデル林内のそれぞれの地形単位上で胸高幹断面積の大きい樹種から選定した。これに、高丸山周辺での既存の調査資料や、当地を良く知る地元林家の意見を参考に、高丸山自然林に自生し、かつ、目標とする森林を形成するにあたって特に重要と思われる種を加えた(表1)。そして、それらを伐採跡地の地形単位に対応させて植栽することとした。

人工林伐採後の植栽樹種の一覧表も添付されています。これらの樹種を、高木—亜高木—低木—草本の一つの多層群落として捉えるとどうなるのか?そして具体的な群集または群落として抽出することは可能か?など、日を改めて検討したいと思います。更に植栽密度については、

植栽密度については、植栽後の活着率や死亡率等に関する科学的根拠がなかったので、 他所で実施されている広葉樹施業での経験的な判断に基づき、以下のように決定した。すなわち、すべての地形単位において、植栽する樹木の総計を4500本/haとし、卓越する優占種を持たない谷および谷壁では、植栽される樹種の密度がなるべく均等になるように配分して植栽すること。また、斜面ではブナの密度を3000本/haとし、それ以外の樹種をなるべく均等な密度となるように植栽すること。そして、尾根ではツガおよびモミの密度がそれぞれ1500本/haとなるように植栽することとした。

この植栽密度については、2014年9月13日の《ポット苗ができるまで(森の作り方6)》のなかで宮脇式の昆植・密植モデルを細かく紹介していますので、後日これと上記を比較してみます。

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