広島県の《森づくり事業》では、事業検証の試みの一つとして森林整備事業の効果を貨幣価値に換算し、ウェブサイトで《「ひろしまの森づくり事業」の評価結果について》と題して公表しています。そこで当備忘録では、その詳細を先日の《森林整備事業を貨幣価値に換算してみる1/2》で紹介してみたのですが、一回では収まりきらず、今日はその続編です。前回と重複しますが、最初に、広島県が公表した事業効果量とその評価額の一覧表を再度、掲載しておきます。
上の表の右端が事業実施によって新しく生み出された効果を金額に置き換えたもの(単位は百万円)。これが、どんな理屈で、どのようにはじき出されたのか、広島県の公表資料を以下に転載しながら、a)洪水緩和から詳しく見ていきます。
a)洪水緩和の事業効果量と評価額
上図は広島県の資料を模写したものですが、ここに記載されている数式の流れを言葉で補足すると、以下のようになるのでしょうか。
大雨が降ると河川を流れる水が溢れ、洪水の危険性が増大する。
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森林は降った雨が直接河川に流れ込む量を調節することで、洪水を緩和する機能を備えてる。
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森林整備を進めることでこの機能も強くなり、森林整備事業を実施する前に比べ、実施後に減少した(河川に流れ込む雨水の)流出量が算出できる。
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この減少流出量の差を、わかりやすいように治水ダムの洪水を調節する能力に置き換え、
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更にこのダムの「単位流出量調整量あたりの年間減価償却費」等を基準に貨幣価値に換算する。
以上のようなフローで洪水を緩和する効果量とその金額をはじき出しているのですが、よく理解することができず、何やら一昔前リーマンショックの際話題になった金融工学の手品を見ているような気になります。
b)水資源貯留の事業効果量と評価額
c)水質浄化の事業効果量と評価額
bとcは森林の機能としてまったく異なるものですが、ここでは二つを合算して一つの事業効果量=2.9万人分(年間)の生活用水使用料に相当としています。またb)水資源貯留とa)洪水緩和は「雨水をいったん貯める」という同じ森林機能のことを異なった視点から捉えているのに過ぎないのではないかと思うのですが、事業効果量および評価額がそれぞれ次のように計上されています。
上記のb)水資源貯留効果およびc)水質浄化効果を、生活用水使用料に置き換える考え方やその数式はよく理解できます。森林整備前と後の貯留率の求め方も別の場所に詳しい資料があるようです。しかし、貨幣価値に換算する時に、事業効果として29,000人が一年間に使う生活用水の量に相当すると具体的に出されている訳ですから、29,000人×水道料金/1年とするわけにはいかなかったのでしょうか。