丹沢の病い5/10=シカの食害

丹沢シカの食害

 

丹沢の森のシカによる被害については、これまでも《丹沢の病い》シリーズのなかでことあるごとに触れてきました。森の植生劣化の原因の多くがシカにあると思われるからです。実際、丹沢の森の関係者はいうまでもなく、この地域の農業関係者の間でも、集まると多くの時間がシカの話題で占められるほどだそうです。それほど丹沢全体にシカの被害は蔓延しているのでしょうか。今回も丹沢大山総合調査学術報告書(2007年)の「第6章 特定課題の総合解析・第6節 ニホンジカの保護管理に向けた総合解析」を資料にしながら、この問題を考えてみます。

なお、報告書はシカが抱える問題を表記のように「ニホンジカ個体群の衰弱」と表現し、その原因を「栄養状態の悪化」によるものとしていますが、この表現は深刻化し拡大しているシカによる影響や被害を受ける側からの視座ではなく、シカを主体とした一面的なものになっています。これではシカ問題の全体を把握した表現とはいえず、理解に苦しむところです。

シカ分布
この地図は、上記報告書(p730)から転載した「ニホンジカ保護管理に関わる対策マップの作成例」ですが、墨系の色で塗られた部分がこの当時のシカの生息域です。これら4種類に色塗りされた部分はそれぞれ次のような基準で作成されています。

シカ対策地域

そして地図からは、おおよそ次のようなことがわかります。シカは本来は平野部に生息する動物ですが、今では丹沢山地に閉じ込められ、特に丹沢山や塔の岳の頂き付近を中心とする高標高のブナクラス域での生息密度が高くなっています。その結果この区域でのシカの食害が拡がり、ブナの立ち枯れや林床植生の急激な劣化、土壌流出などの原因のひとつになっていると思われます。他方、標高が少し下がった域にある放置されたままの人工林や二次林域では、林床の荒廃が進み、シカの生息も困難となっているため、エサを求めて里地・里山域の農地に出没する頻度も高くなっていることがわかります。

そのための施策として、上記報告書は以下の5つの対策を順応的に進めていくことが必要しています。

  1. ブナ林域での密度を低減し,定着を解消すること
  2. 人工林・二次林域における生息環境管理を個体数管理等と一体で計画的に取り組むこと
  3. 被害増加地で計画的捕獲や被害対策を行うこと
  4. 新たな保護管理の担い手育成の仕組みを作ること
  5. 生態的回廊のための森林づくりと広域モニタリングを実施すること

主要なシカ対策の一つが「捕獲」による個体数調整ですが、報告書によると対策の実現には厳しい問題があるようです。高標高域での高密度化解消については、登山者への配慮から捕獲の実施時期が限られることや、従事者の安全性確保が課題となっており、必ずしもシカが集中する場所で捕獲が行えないことが効果のあがらない一因となっています。また、捕獲の大半が狩猟によっていますが、管理捕獲を依頼する狩猟者も近年は減少傾向にあり、 今後も確実に減少すると推測されるので、個体数調整そのものが実行困難になりそうとのことです。

そこで、シカの捕獲を今以上に魅力的にすることで、狩猟者数を確保することができないものかと考え、単に個人的な趣味・趣向からの発想ですが、

シカの皮革を活かして、ファッション業界と連携するのはどうでしょう?

この続きは《丹沢のシカの皮革でファッション界と連携する》で。

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