丹沢の病い7/10=生物相の人為的な撹乱

丹沢の病いシリーズの7回目は丹沢の様々な箇所で露呈するようになった「生物相の人為的な攪乱」について。丹沢大山山系に分布する生物相がヒトの介入によって乱されているという現状を丹沢大山総合調査学術報告書(2007年)では次のように言っています。

 丹沢山地は広い自然地域であり、生物相の人為的な撹乱は少ないと考えられているが、実際にはさまざまな問題がある。もっとも顕著に見られるのは淡水魚の場合であり、特に釣りの対象となるヤマメとイワナの場合は、多くの人による放流のために、在来の遺伝的な特性を持った個体群は判別できない状況になっている。特に酒匂川水系のヤマメは別亜種であるアマゴの分布境界となっているが、その実態は確認不可能である。
人間による採取が、生物相の貧化をもたらしている例としては、山草ブームによる乱採取があげられ、アツモリソウ、ウチョウランなどを始めとしたラン類では多くの種が絶滅、またはそれが危惧される。
帰化生物にも、在来種との競合を生じる可能性のある種がある。その1つは鳥類のソウシチョウである。その進入経路は明らかではないが、西丹沢を中心に自然林にも相当の個体数が見られる。
また、林道工事などで生じた法面の緑化のためにシナダレスズメガヤなどの外来の牧草が多く使われている。稜線上にエニシダが繁茂したり、川原にシナダレスズメガヤが広がっている箇所がある。(第1章  背景と調査計画 第1節  丹沢大山自然環境総合調査(1995)と丹沢大山保全計画」p3—4)

として特に、

  • 放流による淡水魚の個体群攪乱
  • 山野草の乱採取
  • 帰化生物の生息
  • 緑化工事による外来種の使用

を挙げていますが、これは氷山の一角であり、私たちの目に触れない所でもっと拡がっていると認識すべきかもしれません。そして丹沢の自然管理の原則を次のように示しています。

 丹沢の自然はブナやモミなどの天然林、ニホンジカやツキノワグマなどの大型野生動物の存在、深く発達した沢によって自然らしさが保たれている点に大きな特徴がある。その管理にあたっては、可能な限り人間活動の影響を排し自然らしさを大事にしていく必要がある。
管理の原則は、動植物全体にわたる生物多様性の持続と回復を目標とし、その持続的な利用が可能な形で管理することである。
魅力的な自然公園、保水力を持った水源林、 野生生物の生息地、効率的な林業の4つの役割を生物多様性の原則に基づいてコントロールしていかなければならない。(同上p4)

と丹沢の自然の持つ4つの役割を説き、続いて、私たちが具体的になすべきこと「市民としての役割」として、

 入山する際のマナーを守る、ゴミの投棄、沢の水を汚すこと、禁止地区でのキャンプ、山草の盗掘、林道への無断立ち入り、大人数での林床への踏み込みなどである。積極的に、丹沢山地の環境保全に貢献することもできる。
長期的なモニタリングに関わる調査活動、林業の支援、入山者への自然解説などで、丹沢山地の保全に必要なことは、山地の中だけで考えればすむことではない。水を大量に消費することがダム建設の必要性の根拠となり、三保ダム、宮ヶ瀬ダムという山地内での大規模な土木工事が行われた。大気汚染の大きな原因の一つが自動車の排気ガスによることはいうまでもない。このように、丹沢山地の自然環境変化の大きな原因は、我々の都市的な生活そのものにある。(同上p6)

以上のように、このように書き出してみると当然で常識的な範疇になりますが、ヒトのネガティブな行為を諌めると共に、一歩進んで「都市生活者」としての丹沢の自然に対するよりポジティブで俯瞰的な関わりを説いています。これからも丹沢に関わろうとする一人の忘備録として常に持ち続けなければなりません。
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