人工林→広葉樹林への誘導方法

2014年9月3日の備忘録《人工林を照葉樹林に復元する》のなかで、一つの事例として宮崎県の「綾の照葉樹林プロジェクト」を紹介しました。このプロジェクトが照葉樹林の復元を目指して採用する手法にも触れていますが、それは主に人工林を間伐し、その空間にその土地本来の樹木である広葉樹林が自然に生育するのを長い目で観察・管理すると言うものです。当面は針広混交林の状態をめざすのですが、徐々に人工林を駆逐していくプロセスを描いているようです。

上記のプロジェクトのように、人工林の広葉樹林化への動きは全国で起こっていますが、そのキッカケとなったのは、林業の行き詰まりによって日本中で進んだ森林の荒廃にあるのは言うまでもありません。加えて、地球温暖化防止への貢献や山の森が本来持っていた生物多様性の回復、健康意識の高まりによる森の癒し効果への期待など、多面的なニーズがこの傾向を後押ししていると言われています。

また、広葉樹林化への主な担い手は、もっぱら国や地方の研究機関や自治体であり、NPOやこれに協力を惜しまないボランティアの皆様が実施主体として、人工林を広葉樹林に更新するという新しい取り組みに取り組んでいるのが現状です。まだ、始まったばかりの試みのため、確立した手法みたいなものはなく、今後いろんな方法を検証し評価するレベルだと思われますが、丹沢で植樹ビジネスを展開することを夢想する私から見ると、現状の広葉樹林(針広混交林)化への実施プロセスには、三つのレベルで問題があるように思われます。

問題:その1
広葉樹林(針広混交林)化へ手法のそのほとんどが天然更新に頼るという、人の手で植栽するという積極的な方法に較べると消極的であり、そのぶん長い時間を要するということ。これらのプロジェクトのほとんどが用途や予算が限られた税金をベースにしているため、ある意味仕方がないことかも知れませんが、この手法では成功・失敗を運や自然に任せざるを得ない可能性があります。

問題:その2
また、植栽の手法を採用する場合も、先日《高丸山千年の森の試み(2)》のなかで紹介したように宮脇式の潜在自然植生の概念、高木—亜高木—低木—草本という多層群落の視点が希薄であることが多く、多くは主木としての高木だけの植栽を試みたりしており、果たして、これらの方法でしっかりとした多層群落を構成する広葉樹林に更新するのか、懸念している次第です。

広葉樹林化の過程
確かに宮脇方式による広葉樹林化は、本来の自然植生の森を作るために、しかし比較的短い期間で確実な結果を得るために、人の手による多くの工程を必要とします。その土地で十数種類の多層群落を構成する種子を集めることから始まり、これらを2〜3年の時間を費やして、播種し、新芽が出たらポットに移してポット苗として育成し、幼苗が30cmほどまで成長するまでしっかりと管理をし、マウンドを造成し、梅雨にはいる前に一斉に植栽するというプロセスが必要です。しかも植栽後2〜3年間は1〜2回/年の雑草採りが欠かせません。

全国で始まっている人工林の広葉樹林化の事例をすべて確認したわけではありませんが、私が手法として最も確実だと思う《宮脇方式》が見当たらないのが実に残念ですが、これが採用されないのは、自治体などの限られた予算に原因があるのでしょうか。

宮脇方式

上図は以前にも使用した森の皆伐後の、二つの方法(つまり上が天然更新=二次遷移、そして下が宮脇さんの潜在自然植生の多層群落の幼苗を植える手法)によるホンモノの強い常緑広葉樹の森ができるまでの時間経過を比較したモデル図です。この図からは二つ共に結局は極相林としての常緑広葉樹林を形成するのですが、そこに到達するスピードにかなりの差が出てしまうことがわかります。

問題:その3
最後の課題は、多くのプロジェクトが人工林の材木としての有用性を未だに捨てることができない、林業の夢を今も追い続けていることです。生物多様性の回復など森の公益的な機能と人工林の存在は相容れないものであり、成長した人工樹木が出荷できず、管理放棄による森林の荒廃も目立っています。人工林の一部を常緑広葉樹林化することで針広混交林しても、商品としての人工林の延命を図ることは、もはや不可能な時代になっているのではないのでしょうか。

私は従来型の林業に変わる事業モデルを構築すべきだと考えており、端的には人工林を皆伐してそのまま森に置き去りにして自然に戻し、広葉樹林化するものです。その第一歩として丹沢の森をビジネスで再生するというプランを考えている所です。

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