現在進行中の《森の再生1)潜在自然植生調査》では丹沢とその周辺の植生を前々回および前回の二回に分けて見てきましたが、今日はそのマトメになります。以下、植生の一覧表を参考にしながら、進めて行きたいと思います。
以下の植生一覧表は、横浜国立大学webサイト学術情報リポジトリにアップされているPDF資料《潜在自然植生の概念と潜在自然植生図》に記載されている「神奈川県下の大部分を占める標高700〜800m以下のヤブツバキクラス域の潜在自然植生と一致する常緑広葉樹林」の一つを代表例として挙げ、続けて神奈川県のwebサイト『丹沢大山総合調査学術報告書』から「丹沢大山の常緑広葉樹林の3つの群集」に記載されている3例をまとめたものです。なお、3つの群集名は以下の通り。
- ヤブコウジ—スダジイ群集(標高380m)
- イロハモミジ—ケヤキ群集(標高435-500m)
- サカキ—ウラジロガシ群集(標高380m)
1. 高木樹種
潜在自然植生を構成する多層群落である高木—亜高木—低木—草本の4つのパートに分けて、それぞれを見ていくことにしましょう。まずは高木樹種から。
関東以西のヤブツバキクラス域の主木となる高木は、ご覧のように主にシイノキ、タブノキ、カシ類ですが、引用資料でも強調され備忘録でもたびたび触れているように、これらの樹種そして群集は、実際にはわずかに残存するだけで、そのほとんどはスギ・ヒノキの人工植林に置き換えられていることに留意する必要があります。
次に表示するのは、今から40年以上も前なのですが、神奈川県下に残る寺社林=鎮守の森のなかで丹沢およびその周辺に点在する5つの寺社林の高木構成樹種を一覧表にしてまとめたもの。
これら丹沢周辺の寺社林の高木構成を見てみると、最初の一覧にはなかったアラカシなど幾つかの樹種の入れ替えは見られますが、基本的には丹沢の植生とその周辺に残る寺社林=鎮守の森の植生には差異がないようです。ただ詳細まで踏み込むと、標高200〜300mまでの寺社林は主にスダジイを優占林とする植生が分布しているのに対して、標高520mの大山寺のようにそれ以上の高さになると、《ラカシ—ウラジロガシ群集》や《シキミ—モミ群集》にシフトしていることが確認できます。