丹沢の水源林—現状と課題

丹沢の自然再生本一本の植樹が水源林を作る》では本論に入る前に閉幕してしまいました。大気や海を育む以上に、植樹によって生まれる大きな効果であると考えられる水源機能について、改めて本格的な水源林論を展開しながら、丹沢の水源林としての問題に触れてみたいと思います。この備忘録で使う教科書は、dec16,2014備忘録《『丹沢の自然再生』を読んでみる》でも紹介させていただいた『丹沢の自然再生』(日本林業調査会 2012年)。

丹沢に関わる専門家だけでなく、多くの丹沢ファンを読者層を想定した全体で600ページにもなる分厚い本は、5編で構成され、その一番目に《第1編 水源林の再生》を持ってきています。それほど水源林は優先度が高いテーマとして取り扱われているようですが、裏を返すと、森の荒廃に伴う水源涵養機能の劣化が深刻になっているということのようです。

森の水源涵養機能

勾配が急な脊梁山脈を持ち、河川が短い国土が特長の日本では、陸地に雨水が滞留する時間が短いため、水資源を確保するために利水ダムと共に整備が進められるのが水源林です。森の水源涵養機能に着目して整備されているそうです。

では、水源涵養機能とは何でしょう。森に降る雨は樹木の樹冠や森林土壌などで滞留するため、河川へ流出量や流出時間がコントロールされることがわかっています。また、一部は地下の地層や基岩へ浸透し地下水となります。以上のように、その機能には限界はあるのですが、水源林として整備された森林を流域に持つ河川では、洪水を緩和し渇水時にも水量が確保される水源涵養機能を備えていることが古くから知られています。つまり、多量の降雨でも洪水が起こらない洪水軽減の働きと、日照りの時も渇水が起こらない渇水緩和の働きが森の水源涵養機能であると言えます。

なお、森林総合研究所の試験林などにおける観測結果によれば、針葉樹林と広葉樹林、人工林と天然林の間では水源涵養能力(浸透能)の明確な差は確認されておらず、水源涵養機能の優劣は立木の違いよりも、地域の気象条件や長年形成されてきた土壌の質などによる影響が大きいとされています。(この稿、未完)

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