2014年12月17日の毎日新聞電子版を読んでいると、先日TVで動いている宮脇昭さんの映像を見たばかりだというのに、またまた宮脇昭さんの名前を見つけてしまいました。それも、多くの人に惜しまれながら先日、死んでしまった菅原文太の追悼記事の中にその名前を発見してしまったのです。さっそく、その前後の2〜3行を転載してみます。
東日本大震災後、進まぬ復興や原発問題に憤った菅原さんは「役者引退」を宣言し、12年暮れ、身近な仲間と「いのちの党」を結成した。被災地沿岸に計画されていたコンクリートの防潮堤に対し、宮脇昭・横浜国立大名誉教授が提唱する「緑の防潮堤」を応援する講演会を開いたり、ミツバチの大量死とネオニコチノイド系農薬の関係についての勉強会を開いたりした。(毎日新聞 2014年12月17日 東京夕刊より)
この、敬愛すべき「理論と実践」の植物生態学者は、老齢にもかかわらず、特に2011年以降はもっぱら実践の分野に軸足を移しての活動が多く、新聞記事の中にある《緑の防潮堤》はそのなかでも中心に置かれているものだと思われます。なので、今日の備忘録は、行動する宮脇昭さんが、これまで全国に残して来られた《潜在自然植生》の豊かな森に成長した緑の足跡を、私自身の頭に蓄えておかねばならない大切なこととして、列記してみるつもりでした。
ところが、《緑の防潮堤》作りの一環として宮脇さんを陣頭に行われた岩沼市の「いのちを守る防潮堤」では、タブやカシなどの常緑広葉樹の約半数が枯れてしまう被害に遭い、海岸林には従来のクロマツの方がよかったのでは、との意見も出され、管理者の国土交通省では見直しも検討しているとの、今年の夏のはじめに遡ってしまいますが、そんな過去記事が出ていました。宮脇さんのこの被害についての発言も読むことができます。
宮脇氏は「大部分は新芽が確認され、予測通り。一部で生育の遅れや部分的に枯れた状態があった。台風などで塩分を含む砂が飛んできて、埋もれたのが原因」とコメントした。国交省は防風柵を追加し、新たにタブノキなどを植え足す「補植」の対策をとる。
宮脇氏は「国交省には迷惑をかけたが、3年もたてば根が入り、うまくゆけば1年で1メートルは育つ」などと話した。国交省は、他の工区で植える樹種について、専門家をまじえて検討を続けているという。(朝日新聞デジタル 2014年7月3日)
去年の台風で防潮堤が高潮に襲われたことが原因であるとしていますが、宮脇さんでさえも、予測を越えた事態に見舞われてしまい、うまく事が運ばない場合もあるんですね。今回の場合は、結果論になってしまいますが、「《緑の防潮堤》の技術(政策)のあり方について、海岸生態、造園、緑化、生態工学など、研究者
とは言っても、宮脇さんの躓きを見て、やっぱり従来のクロマツ林にと言う意見も出ており、記事によると、林野庁は「従来通り、潮風に強く、成長が早いクロマツを植え、復旧を進める」としています。が、今回の震災でそのほとんどが流され、あるいは倒伏・折損し、潰滅状態になったクロマツ海岸林に対し、広葉樹が混交する樹林帯では、ほとんどその被害が見られなかったことを考えると、成長が早いからと言う理由で今までのようにクロマツに頼るというのは、納得できる人も少ないのではないでしょうか。
海岸林としてはごく一部の地域にしかなかった広葉樹林ですが、この海岸林が津波に対して立ち向かった詳細「新舞子浜の海岸林」を《いのちを守る防潮堤(いのちを守る森の防潮堤推進東北協議会)》のウェブサイトで読むことができます。多くの方に知ってもらいたい貴重な事例でもあります。