森の恵み シカ肉給食

朝日新聞2014年12月18日夕刊三面に紙面全体の1/3を越えるほどの扱いで「森の恵み シカ肉給食 カツレツ・竜田揚げ・麻婆豆腐・・・広がる試み」と、シカ肉の記事が載っているのを発見。先日開かれた「丹沢大山自然再生活動報告会」(主催:丹沢大山自然再生委員会)では多くの参加者、特に食欲旺盛な若い人達が言っていた「毎年、丹沢で捕獲する1,500〜2,000頭のシカをそのままその場に埋めてしまうのは勿体ない!何とか食用にはできないのでしょうか?」という切実な問いかけに、この朝日新聞の記事がヒントになるかも知れない、という訳です。
(以下、「」内は朝日新聞の記事からの引用です)

その食害のために、全国で農林業にとって厄介者となってしまったシカですが、捕獲したシカの肉を学校給食で食材に使うという試みが始まっていると、朝日新聞は全国の事例を紹介しています。そこで共通するのは「地産地消を通し、動物の命や地域の環境を考えるきっかけになっている」ということ。

まず最初に登場するのは、北は北海道東部の山間のにある認定こども園・置戸町こどもセンターどんぐり。園の管理栄養士の方が、シカ肉の栄養面からも給食への導入を考え、準備し、一年ほど前から月に一度の割合で、ハンバーグ、カツカレー、竜田揚げなどとして出しており、園児からは好評だと伝えています。

問題は肉の供給ルートですが「シカは地元ハンターも捕獲するが、安心・安全の観点から北海道のマニュアルに沿った食肉処理・加工をするエゾジカ協会認証施設から仕入れている」とあります。なるほど、まず食の安心・安全からシカ肉の処理・加工についてのガイドラインがきちんと用意され、二番目に、その衛生管理上のマニュアルを用意し、三番目に実際にマニュアルに沿って肉の処理・加工を許可する認証制度が設けられていることがわかります。神奈川県でも丹沢シカ協会認証制度みたいなものはあるのでしょうか。そして実際に認証を受けた施設はあるのでしょうか。ぜひとも、知りたい所です。

他にも試験的な導入も含めて、釧路市、兵庫県丹波市青垣町、滋賀県多賀町および日野町、岐阜県揖斐川町、さらに多彩な献立が自慢の高知県香美市が登場していますが、この地産地消の構想が頓挫してしまった事例として、朝日新聞の記事は最後に次のように綴っています。

普及にもいくつか課題がある。長野県下諏訪町の下諏訪南小では2年ほど前、年1回のシカ肉メニューをやめた。良質な肉を得るにはシカの捕獲や処理にコストがかかるため価格は牛肉並みで、購入費が負担になった。静岡県伊豆市では野生動物の肉を使いことに保護者らの不安があり、導入を断念したという。(朝日新聞2014年12月18日夕刊三面)

つまるところ、安心・安全を確認できた食材を想定コスト内に消費者に届ける仕組みを作ることが必要だということでしょうか。その仕組みに基づいた生産(捕獲)→加工・処理→消費という一連の恒常的な流れを、地場事業としてカタチ作ることがスタートだと思われます。

ところで、シカ肉は栄養面から見て、他の肉と較べてみると、どうなんでしょう。

タンパク質は和牛の2倍、豚の1.2倍。(ロース肉の場合)
脂質は和牛の2.6%、豚の9.2%にとどまる。(ロース肉の場合)
(エゾシカには)体内で合成できないリノール酸や健康に良いとされる脂肪酸を多く含む
極めつけは、鉄分。和牛の7倍以上。
食味は牛の赤みに近く、ヒレ肉のローストはしっかりとやわらかい。

これは、なかなかの、もののようですよ。この他に気になるのは「臭い」ですが、これはいかにして早く血を抜くか!によって決まるようなことを聞いたことがあります。例えば、中上健次の『紀州 木の国・根の国物語』のなかで、筆者は「屠殺とは神人の業である」として、こんなふうに牛の屠殺について語っています。

紀州 木の国・根の国物語昔のようにオノでみけんを叩くのは伊勢のほうに残っているだけで、松坂では鉄砲である。火薬で撃った鉄砲から出た真鍮棒がみけんに入り込み、真鍮棒が抜けると、「バターッと倒れるわな」そしてその穴にワイヤを通す。「すぐ神経にイくでな。ほで、よう起きて来ん」すぐ喉をかき裂き、血を出す。男は「ワイヤぐらいやったらよう通すけど、喉かきはようせんよ」と言う。喉かきとは血が肉に廻らないためであり、それを早くしなければ意味がない。食肉業者でスキヤキ店として世界中にしられているという『和田金』の牛を屠殺する時は、社長が直接来て屠殺の現場を指揮すると言う。「血をようけだしたら、肉が柔らかくなる、上がりがようなる、と『和田金』のは喉かいて腹までかくな」(中上健次『紀州 木の国・根の国物語』角川文庫版 松坂の章p191-192より)

※最後に。ハンティングに税金が課せられている!と聞いてビックリしたのですが、それが少し減免されることになったとTVで聞いたことがあります。これもシカ肉の地産地消を加速するためのものでしょうか。
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