いよいよ関東地方もスギ花粉の飛散の季節となり、先日のtvでも無花粉スギの話題なども織り交ぜながら、4人に1人は被害を受けているというスギ花粉の原因&対策について報じていました。そしてここでも、50年もの間育て伐採した1本のスギの樹の価格が、外国産木材のそれに押されて僅か500円にしかならないという厳しい実情を紹介し、そのため、今や1億本以上もの大きく育ってしまったスギを切り出すこともできずにいることが、花粉症のそもそもの原因であるというのです。この備忘録でも、数ヶ月前に種蒔きをして出荷する大根と20年のスギの間伐材が同じような値段だと嘆くある植林家のブログの一節を紹介したこともあり、林業の深刻な病いを再認識した次第です。
とはいえ、人類はただスギ花粉に手をこまねいているわけではなく、その対策も冒頭の無花粉スギの開発や、花粉そのものを出さないようにスギの雄花を枯死させてしまう農薬の研究などがあるそうですが、無花粉スギは現在の症状に有効ではなく、農薬も他の自然やヒトへの影響も心配されそうで、いずれにしても、その土地本来の自然を伐採して作った広大な人工林の、植栽当時には全く予想もしなかったヒトへの威嚇とも思えるような振る舞いを前にすると、自然とヒトの関わりのある種の困難を示唆しているようです。
その点、私の《木を植える!》事業計画は世の中の常識であるスギ・ヒノキなどお金になるこれまでの植林の常識とは180°も異なる《宮脇式潜在自然植生の密植・混植》による常緑広葉樹の植樹事業のため、スギ花粉の心配だけはないのですが、人工林の経済的な価値には目を向けることなく、山の緑をヒトの手が未入だった太古の森に戻そうとする、まるで歴史を逆走するような妄想を抱いているのではないかと疑われる始末で、恐る恐るこのプランを話しても迷惑そうな顔をされて、誰にもまったく相手にされないのが実情です。
《木を植える!》市場でニッチを狙う?
このように(そんなに多くはないのですが)時々私の事業プランを聞いてもらう機会があり、これは市場調査を兼ねてのことなので、その種の質問に入ろうとすると「迷惑そうな顔をされて」しまい、私の《木を植える!》事業計画はなかなか賛同を得られるまでには至っていない今日この頃でもあります。そこでよく言われるのは、事業を立ち上げる時はまず《ニッチ》つまりは隙間を狙え!ということです。最初は市場の隙間分野=ニッチャーを狙い、ニッチャーからチャレンジャーに、そして最後はリーダーへと段階的にステップアップするのが理想的な事業展開というわけです。この有名な仮説=コトラーの4つの競争分野を図にすると、このようになります。
このサクセスストーリーが今も有効なのか、疑問もありますが、事業を始めるにあたって狙いどころであるニッチ分野とは、これによると、つまりは高品質・少量生産の組み合わせで、他にはないオリジナルな商品をこれまでターゲットとされなかった顧客を新しく掘り起こし市場を創造するコトを言っているのだと思われます。大変ハードルが高くなりそうですね。しかも、ここには差別化戦略も不可欠であり、経済性の追求と利益の最大化も入ってきます。
では、上の下線部を《木を植える!》事業に当てはめてみましょう。
まず販売するサービス・商品が《高品質》であるとはこの場合、次のような特長を指すことになります。その土地本来のシイ、タブ、カシ類の常緑広葉樹を植樹し、これら主木を中心とした多層群落の森の基本形を30年の時間をかけて創り出すことで、顧客には苗木がやがて林に成長していくプロセスを楽しみながら、図にあるような樹木が生み出す3つの働きを実感していただくことを大きな顧客メリットと考えています。
従って、森を創るというイメージからすると《少量生産》にこだわる必要は全くありません。従来はせいぜい個人が出来る植樹といえば、庭に見栄えのいい庭木を何本か植えて孤独な鑑賞をすることであり、自治体による住民サービスの一つとして、緑が適度に配置された公園を市民に提供する程度にとどまっていましたが、新しい形として一人一人が顧客という立場で緑と関係するというわけです。ここには商品・サービスの《オリジナリティ》もあり(もし、本当に名乗りを上げてくれるような人が勇気を持って登場してくれれば、ですが)《顧客》を掘り起こすことも新しい《市場》を開拓することも、夢ではありません。
(この稿未完)