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《潜在自然植生の森》が持つ事業優位性

先月の備忘録は《木を植える!》事業計画をその類の本を参考にしながら、5回にわたって文字通り妄想を逞しくしながら、事業プラン書き方の習得に集中してきました。これまでやってきたことを概観すると以下のようになります。

プラン1-5

 上の5つの妄想の中でも特に怪しいのが、貧しい想像力を駆使しながらひねり出した数字が全編にわたって幅を利かせている2と3になります。この2つは、もっぱら神奈川県の《水源の森事業》の予算総額を唯一つの頼り拠にし、カンと思いつきで並べた数字で構成されています。

なので、正確な県の《水源の森事業》の予算配分の細目がわかると、これらを基準にした私の《木を植える!》事業のコスト、つまり植栽地の既樹の伐採・搬出→植栽床の整備→保護柵の設置→植樹→その後の管理という一連のプロセスにかかる費用の詳細も明らかになるのですが。何とかして県の資料から発見したいと思っています。

高品質&低価格の両立を可能にする《木を植える!》事業

前回、《木を植える!》事業が提供する《高品質》の内容を次のように記述しました。

3要素

図にあるような植物にしかできない3つの働きを、なかでも立派にやってくれるのが(関東地方の標高800m以下の山麓では)その土地本来の常緑広葉樹であるシイ、タブ、カシ類を主木とし、高木—亜高木—低木—草本の多層群落を形成する《潜在自然植生》の森であると言われています。

この植生をひたすら研究&実践している宮脇昭さんによると、今日では《潜在自然植生》は人の手によりそのほとんどが失われ、わずかにその痕跡をとどめているのが《鎮守の森》と呼ばれている社寺林だけで、それも、特に首都圏では急速に消滅しつつあると。しかし一方では意外な所に、人の手で意識的に作られた植生が《潜在自然植生》の森として復元している事例を私たちは見ることができます。それが《神宮の森》です。

森の力宮脇さんは《神宮の森》を「先人たちが知恵を絞ってつくった人工の森の世界最高傑作のひとつ」 (宮脇昭著『森の力 植物生態学者の理論と実践』講談社現代新書 p173)と最大級の言葉を使って紹介されています。およそ100年の歴史を持つこの森は《奇跡の森》とも言われ、私の備忘録でも《潜在自然植生》の森の様子を伝えたいときには、見本としてたびたび紹介するなどして大いに活用させてもらっている次第です。

《神宮の森》の計画段階での植生プランと森のデザインの詳細については私の備忘録《代々木の杜(もり)の物語~明治神宮(nhkbs)》でも紹介していますが、nhkの番組では、常緑広葉樹を主木にした多層群落の森が作り出す、それ自体で循環するような豊かな環境が、植物だけではなく動物も含めた生きもの全体の生態系を育んでいる現実をしっかりと見ることができます。

そこで、丹沢での《木を植える!》事業をわかりやすく言い換えると、100年後には《神宮の森》と同様に豊かな生態系を作り出す《潜在自然植生》の森を丹沢の山麓に作ろうというものです。これが実現できれば、これ以上の《高品質》はないように思えます。また、上図の3つの働きを基軸にした自然の森の営みは植樹の苗木数が多ければ多いほど、森の緑は深く、豊かになる訳ですから、多くの顧客の賛同を獲得するためにも、そのサービス・商品は《低価格》でなければなりません。

このため、これからは《高品質》と《低価格》が両立するための分岐点=ミニマムな顧客数をあらかじめ設定することが、事業成功の鍵となりそうです。

《潜在自然植生》の森の優位性を一言で表現してみる

丹沢での《木を植える!》事業に多くの顧客の賛同を得るためには、もっともっと《潜在自然植生》の森の優位性をわかり易い表現で訴求することが大事なことになります。この顧客メリットとしての具体的な優位性を宮脇さんの著作からいくつか抜き出してみることにします。

木を植えよ!s私は宮脇さんが定義する《潜在自然植生》といういわば専門用語としての言葉を備忘録の中ではそのまま、何の工夫もせずに裸で使っていますが、宮脇さんは彼の著作、例えば『木を植えよ!』(新潮新書  2006年)の中で、拾い出しただけでも、もっと平易なさまざまな言い方に置き換えています。文章の脈略に沿って使い分けようとされているらしく、《潜在自然植生》をやさしい言葉で言い換えたバリエーションをいくつか見つけることができます。例えばこんなカンジで。

 本来の自然の森(p24)
 自然の森に限りなく近い(p49)
 豊かな自然の森(p58)
 自然の森のなごり(p111)

他にも「ふるさとの木によるふるさとの森」(p55)という少し長めですが、大変わかりやすいものもあります。ところで、宮脇さんの「限りなく近い」とか「なごり」という注意深い表現には、ヒトの手が加わる前の100%自然の(例えば太古の)森には厳密な意味ではもはや戻れないという意味が含まれており、今日では人為的に消滅させられた種があるということだと思われます。ともあれ先に進みますが、宮脇さんの言葉をこっそり借りてきて、《木を植える!》事業の鍵となるコピーには《常緑広葉樹が育む、豊かな自然の森》というのは、どうでしょう。

(この稿未完)

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