宮脇方式による《ふるさとの木によるふるさとの森づくり》のシリーズ4回目は、ポット苗の作り方およびその育て方について。前回の内容と一部重複するところもありますが、作業の流れを一連のものとして捉えるためには欠かせない要素なので、一つ一つの項目を確認しながら進めることにします。
なお、文中のイラストは報文に記載のものを私がなぞったもので、オリジナルとは異なる形状やラインになっている場合があります。詳細は《横浜国立大学学術情報リポジトリ》のwebサイトに置かれているpdfファイルでご確認ください。
6.ポット苗の生産と植栽法
a.ポット苗の生産
1)種子の採取
・天然落下種を採取、または母樹より直接採取する。
(1)天然落下種:
・虫、鳥、獣の食害を受けぬうちに早めに採取する。
(2)直接採取
・母樹の痛みが少なくなるように、球果を摘み取るか、球果のついている小枝を切り取る。
・枝または幹を揺すって落果させる。
・作業効率を上げるため、球果のついている枝を切り取るか、伐採予定地の母樹を伐倒する。
2)種子の精選
・水選によって行なう。
・水より比重の大きいものは内容充実粒、小さいものは虫害粒などの不良種子。
3)播種
・精選後、直ちに発芽床に播種し、2~3cm覆土する。
・覆土には砂、砂質土壌、表土を用いる。
4)ポットへの移植
・葉が2~3枚出た頃に発芽床より丁寧に抜き取り、ポットに移植する。
・ポット用土は、有機物に富む土(表土または堆肥)に殺虫剤を混入したものを用いる。
・移植後第一回潅水はたっぷりと行ない、二回目は鉢の中心まで水がしみ込むように潅水する。
5)育苗
・乾燥と潅水を数週間繰り返し、側根が万遍なくポット内に充満するように潅水管理を行なう。
・追肥はやり過ぎないこと。
b.ポット苗の植栽方法
1)
・植栽予定地が平坦な場合は、通気と排水を良好にするためにマウンドを造成する。
・マウンドの基部にはコンクリート、鉄、特に伐採木、建築廃材などの有機物はすべて土に盛り 込み、その上に基土を盛り重ねていく。
・基土が貧養土の場合は、20~30cmの厚さで表土を客土*し、計画の高さ+50~100cmとなるよ うに、ぽっこりと盛る。
・高さは基底部幅の1/2を目安とする(スロープの斜度45°)。
* 耕地の土壌改良のため、他から性質の異なる土を運んで混入すること。
2)
・斜面の法面が30~40°で急斜面の場合は、粗朶材、タケ材、あるいは雑木などで土留めをして 土を盛ることが土木的な基礎条件となる。
・急傾斜地、谷部などでは崩壊や表土流出防止のため、編棚工事を行なう。
3)
・植採用の穴はポットの直径の1.5倍に掘る。
・斜面の場合、掘り取った土は穴の上部に置く。
4)
・根のよく発達したポット苗を植え付ける直前にサッと水に浸ける。
5)
・ポットから苗を丁寧にはずし、根元をやや引っ張り気味に穴に入れる。
6)
・根群の上部の土面が穴より一寸出る位に高さを調節してから、土をかぶせる。
7)
・根群の周り(根元をはずす)を指で押さえて固定する。
・必要に応じて、苗木の根部を持って、軽く持ち上げ、土に馴染ませる。
8)
・麦わら、落ち葉、おが屑などの適当な有機物を根の周りに敷く。(マルチング=根囲い)
・敷きわらの場合は、斜面に直角の方向に敷き、荒縄など植物性のもので止める。
・斜面、のり面*の場合は、敷き藁がもっともマルチング効果が高い。のり面や斜面の崩壊防止、 土の水分の発散防止、雑草抑制、そして最後には土に還 元する複合効果が高い。
* 法面(のりめん)とは、切土や盛土により作られる人工的な斜面のこと。
9)
・植栽後、1~2年間は雑草が苗木より大きくなることがないよう、人力で抜き取り、マルチング として利用する。
・干ばつなどで乾燥が極端な場合は、水遣り(みずやり)を行なう。
・なお、有機肥料の他は化学農薬・肥料は原則として使用しない。
10)
・植栽2~3年後、苗木がお互いにふれあう状態にまで成長す ると、人為的管理は不要となり、自 然の手に委ねる。
・3年程度経過後には自然林の若齢林(3~5m)の姿が見られるようになる。