ポット苗ができるまで(森の作り方06)

いのちの森を生む《森の作り方》シリーズではたびたび《ポット苗》について、潜在自然植生の森を作る上での重要なキーワードの一つであることを宮脇昭さんの本をそのまま 代弁するようにして触れてきましたが、今日はもう一度ポット苗にフォーカスし、ポット苗の達人になるための特別講座を開くことにします。今日の教科書は『苗木三000万本 いのちの森を生む』(宮脇昭著 NHK出版 2006年)。p174〜197までを簡単にまとめたものです。詳細については同書に目を通されることをおススメします。

1.ポット苗をつくる前にすべきこと

1)植栽計画

最初に、潜在自然植生の森を作るための植栽計画を立てることが不可欠です。主な項目は

  • 森づくりの手順を示す
  • 森づくりの目的を明確にする
  • 誰が主体となり、どのように作るのかの手法を決める
  • 予算を決める
  • 植樹後の管理形態・管理費用など、将来像を明らかにする

など、はじめに森をつくる全体プランが必要になるという訳です。

2)樹種の選定

その土地本来の樹種を見極めること。この見極めが難しそうです。主木とそれを支える亜高木、低木などを選定することが不可欠になりますから、図鑑を片手に 丹沢の現地調査の日々を送らなければなりません。ちなみに宮脇さんは「植樹祭では十数樹種、多いときには30〜60種類ぐらいの苗木が用意される」(同書 p178)と書かれています。

樹種の選定が決まると、幼苗をポット容器で育苗し、根群が十分に発達したのを確かめて、今度は植樹地に植え替えることになります。植樹の際は1㎡あたり3 本ぐらいに密植・混植することで、植物集団はお互いに競り合いながら、我慢し合って密度効果で生育するのだそうです。下図は10m×3mの用地に12種類 の幼苗を植樹した場合の模式図ですが、この場合2種類の主木は2mの間隔に1本の割合で計15本を植えることになります。ここで、ぜひとも知っておきたい のは、このなかで生き残る主木の本数または%なのですが。

模式図
植樹後の2〜3年の間は草取りが年に1〜2回必要ですが、4〜5年経つと樹冠が茂って、陽性の帰化植物などの雑草は生育できなくなります。この状態になると、あとはもう自然にまかせて多層群落ができるのをじっくり観察するだけでよいそうです。

3)移植を可能にしたポット苗

スギ、ヒノキなどの針葉樹は比較的根が浅いため、裸苗のまま山に運んで植えても活着し、20〜30年間枝打ちや間伐を続けると、一見美しい人工林が出来上 がるのですが、潜在自然植生の主木となるシイ、タブ、カシ類、そしてブナ、ミズナラ、替えで類などは一般に深根性&直根性のため、裸苗では難しいものがあ りました。この課題を解決したのが、ポット苗による育苗の方法です。

まず、潜在自然植生の主木群のドングリを拾ってきて、播種(ばら播き)し、根群が十分に発達するまでビニール製のポット容器で育苗し、移植する方法でした。これからこの手法を詳しく見ていきましょう。

2.ポット苗ができるまで

1)種子(ドングリ)集め

pot01 まず、潜在自然植生の主木の種類によって、ドングリがなる時期が違うので、その時期を逃さないようにすること。例えばタブノキは7月の末に青い実が赤くな り、熟すと濃い紫色になります。タブノキ以外の照葉樹であるシイ、カシ類などのドングリが木から落ちるのは9月〜11月にかけて。次に注意すべきは、常緑 のシラカシ、アラカシ、ウラジロガシ、イチイガシと落葉樹のクヌギ、コナラ、アベマキなどのドングリは見分けがつきにくく、ドングリを集める前に必ず親木 を見上げて、常緑樹か落葉樹かの確認をすることが必要になります。

拾ったドングリには虫が入り込んでいることも多いので、すぐに水のなかに30時間ほどつけて、虫を窒息させた後で播種しなければなりません。

2)播種の方法

二つの方法
トロ箱を使用する場合、箱には1㎡あたり300〜500粒くらいの割合で播種します。このとき深植えはせずに、ドングリがやっと隠れるぐらいに土を被せ、その上に枯れ草や落ち葉、切った稲藁を乗せる。水はやり過ぎないようにする。生物社会ではやや厳しい状態のほうが健全だそうです。天気の良い日は3日から一週間に1回ぐらいの程度で、土が乾いていたら少しずつ水をやるようにします。

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3)ポット苗をつくる

7月の末に播いたタブノキの種からは9月に、秋に播くシイ、カシ類は土の中で冬を越し春になって、新芽が出てきます。ここで留意しておくことは、植物はまず根が出て、8〜10cmほど伸びてから芽が出るのだそうです。ドングリから出た幼苗をポット容器に移すタイミングは、土の上に双葉か四葉くらいの若い時です。


ポットに移す場合は、まずポットの底に砂まじりの水はけのよい土を入れ、トロ箱からゆっくり抜いた苗を少し引っ張り気味にしながら、周りから腐葉土を山盛りになるまで被せます。この時、根も息をしているので、土をあまり押さえ込まないようにするのがコツです。
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上のイラスト(左)のように丁寧にやさしくポット苗に仕上げたら、トロ箱などに並べます。この状態が1.5〜2年ほどの長期にわたって続くことになります。この期間の主な留意点をまとめてみました。

  • トロ箱などに並べたら、最後に上から切り藁や枯れ葉などを被せて完成。
  • 水は3日から一週間に一回くらいの割合で、藁や枯れ葉をはずしてみて、中の土が乾いていたら、藁がしみ入る程度にじょうろでそっと水をかける。
  • 上のイラスト(中)のように1.5〜2年ほどで地上部が30〜50cmに成長し、根群がポット内に充満すると、いつでも移植が可能。
  • 理想的な移植は春3月から6月初めの梅雨の前の時期。
  • 移植の際は、ポットからやさしく苗を抜き出して浅植えに。周りには藁をまんべんなく敷き詰め、風で飛ばされないように縄でしっかり押さえる。(あまり参考にはなりそうもありませんが、そのつもりで描いたのが、上のイラスト(右)でした)

※このページのイラストは今日の教科書『苗木三000万本 いのちの森を生む』(宮脇昭著 NHK出版 2006年)。p183の《ポット苗のつくり方》をわかりやすく解説した写真をもとに起こしたものですが、できれば本書を読まれることをおススメします。

(続く)

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