丹沢の植生は30タイプ(2.代償植生)

現存植生の多くは、本来その土地に生育していた自然植生(原生林など)が人間活動の影響によって置き換えられた代償植生であると言われています。その代表が二次林で、人工植林とは異なり、自然植生(原生林など)が何らかの原因で破壊されたあとに自然に再生した森林を指しています。

丹沢の植生も、特に800mを境にその下部に拡がる常緑広葉樹林帯(ヤブツバキクラス域)は古くから伐採や植林等の人為的な影響を受けて、自然植生といえるものは少なく、そのほとんどがスギ・ヒノキ植林などの代償植生となっているようです。《丹沢の植生は30タイプ》の第二回目は代償植生としての二次林および二次草原の分布を丹沢大山総合調査学術報告書(2007年)に沿って見ていきたいと思います。

2.代償植生

代償植生

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夏緑広葉樹二次林
クリ-コナラ群集

クリ-コナラ群集は、ヤブツバキクラス域上部、 標高約300 ~ 700m に分布するコナラ等が優占する夏緑広葉樹二次林である。 植生高は約 13 ~ 18m でコナラの他、イヌシデ、 アカシデ、エンコウカエデ、エゴノキ、 ヤマザクラ等を混生する。林床にはヤマツツジ、コゴメウツギ、コウヤボウキ、クロモジ、ムラサキシキブ、ノササゲ、ナガバジャノヒゲ、ヤブレガサ等が生育している。この群落は長い間、薪炭林として定期的な伐採などの人為的干渉下で持続してきた。分布域から推定するとサカキ-ウラジロガシ群集の二次林と考えられる。 東丹沢エリアでは、北西部の低標高地山腹斜面にまとまってみられる。また西丹沢エリアでは、大又沢下流の斜面下部に小面積でみられる。(「東・西丹沢の植生比較—丹沢東西モニタリングエリアの植生」p70 )

17)
夏緑広葉樹二次林
アカシデ-クマシデ群落、フクオウソウ-ミズナラ群集

アカシデ-クマシデ群落およびフクオウソウ-ミズナラ群集は、ブナクラス域の夏緑広葉樹二次林として一つの凡例にまとめられた。アカシデ-クマシデ群落は、ヤブツバキクラス域上部~ブナクラス域まで広く分布する、アカシデ、クマシデ、イヌシデ等のシデ類を優占種とする夏緑広葉樹自然林、または二次林である。植生高は約 8 ~ 17m でシデ類の他、オオモミジ、リョウブ、 ヨグソミネバリ、 サワシバ等を混生する。 林床にはコアジサイ、トウゴクミツバツツジ、シロヨメナ、アセビ、ウツギ、ミヤマカンスゲ、スズダケ等が生育している。立地は、渓谷沿いの土壌の浅い急斜面や岩角地斜面に成立している。この群落は、東・西丹沢両エリアの渓谷沿いの急傾斜地を中心に広く分布している。

フクオウソウ-ミズナラ群集は、ブナクラス域に分布するミズナラを優占種とする冷温帯夏緑広葉樹二次林である。植生高は約 15 ~ 22m でミズナラの他、イヌシデ、エンコウカエデ、ミズキ、ハウチワカエデ等を混生する、林床には、ヤマグワ、ツクバネウツギ、アブラチャン、ヤマムグラ、オオイトスゲ、アシボソ、マツカゼソウなどが生育している。生育立地は山地の土壌の発達した山腹斜面であり、ブナ林やイヌブナ林が伐採された後に成立したと推定される。東・西丹沢両エリアのブナ林やイヌブナ林などに接した山腹斜面に分布している。(「東・西丹沢の植生比較—丹沢東西モニタリングエリアの植生」p70-71 )

18)
常緑針葉樹二次林
アカマツ群落

アカマツ群落は丹沢山地では少なく、急峻な尾根部に小面積の林分が成立している場合が多い。土地的な終局群落と推定される。西丹沢エリアでは確認されなかったが、東丹沢エリアでは、ヤビツ峠から大山にかけての尾根部に小面積成立している。群落高は約20mでアカマツが優占し、その他ミズナラ、ホソエカエデ、ミズキを混生している。林床にはスズダケが高い植被率で優占し、 その他アブラチャン、クロモジ、マメザクラ、ツクバネウツギなどが生育している。(「東・西丹沢の植生比較—丹沢東西モニタリングエリアの植生」p71 )

27)
二次草原
トダシバ-ススキ群集

トダシバ-ススキ群集は、刈り取り、火入れ、採草、耕作放棄などさまざまな人為的干渉によって成立している代償植生に含まれる二次草原である。植生高は約1~2mでススキが優占し、その他トダシバ、イタドリ、ノコンギク、ナワシロイチゴ、ヒヨドリバナ、ミツバツチグリ、タチツボスミレなどが生育している。東丹沢エリアでは、林道法面や伐採跡地など小面積の植分を形成しているが、西丹沢エリアでは伐採跡地を中心にやや広い面積を形成している。(「東・西丹沢の植生比較—丹沢東西モニタリングエリアの植生」p71 )

26)
二次草原
ヤマカモジグサ-ミヤマクマザサ群落、スズダケ群落など

東丹沢エリアの丹沢山稜線付近には、ブナの立ち枯れやシカの食害による偏向遷移によって成立したと推定されるササ草原がみられる。植生高は約0.3~0.8mでミヤマクマザサ、スズダケ、あるいはヤマカモジグサが優占し、その他ヨツバムグラ、バイカウツギ、ヒメチドメ、ホソエノアザミなどが生育している。西丹沢エリアでは確認されなかった。(「東・西丹沢の植生比較—丹沢東西モニタリングエリアの植生」p71 )

28)
二次草原
クサイ-オオバコ群落

東丹沢エリアの丹沢山山頂付近の登山道上には、踏圧によって成立する路上植物群落がみられる。植生高は約0.1~0.3mで、クサイ、カワラスゲ、オオバコ、ヒメノガリヤス、スズダケなどが生育している。西丹沢エリアでは確認されなかった。(「東・西丹沢の植生比較—丹沢東西モニタリングエリアの植生」p71 )

なお、日本全国の植生の詳細は1/25,000縮尺地図で表された《自然環境保全基礎調査 植生調査 2次メッシュ情報》として見ることができます。丹沢山系は主に以下の区分になります。

上記ウェブサイトを開くと、jpgやpdfファイル形式でデータをダウンロード可能です。
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