神奈川に残る鎮守の森(5/5)

※《神奈川に残る鎮守の森(4/5)》からの続きです。

39.八菅神社

中津川に面した八菅山の集落に続く丘陵の西側はゴルフ場として開発されているが、海抜100〜170mの南側斜面から東側斜面にかけては、八菅神社の森と称されるスダジイ林が生育している。
一部に杉谷檜が植栽されているが、200段を越す階段をなす参道周囲は樹高が15m以上のスダジイ林が自然植生として生育する。
高木層は台地上でアカシデ、ヤマモミジ、ハリギリを交え、スダジイが優占する林分となっている。亜高木層以下はヒサカキ、サカキ、アラカシ、ツルグミ、クロガネモチ、アオキ、ビナンカズラ、ベニシダ、イタチシダなどヤブツバキクラスの種(常緑の自然植生の構成種)が比較的多く生育する
八菅神社の森は、相模へいやにそって海岸から比較的内陸まで生育するスダジイ林(ヤブコウジ—スダジイ群集)が10,000㎡以上もまとまって残存生育していることが特徴とされる。
現在すでに八菅山の集落から社殿のあるところまで自然植生を縫うように車道が設けられている。この車道による植生への影響は少なくないので、今後は平常時の車両の通行を止め、迂回的性格の歩道とする必要がある。(調査結果p150)

海抜220mの日向薬師、520mの大山寺そして130m前後の八菅神社ともにスダジイなど常緑広葉樹を主木とする《ヤブコウジ—スダジイ群集》の同様の多層群落を構成していることがわかります。標高が不明な松石寺も高木—亜高木—低木—草本の各層において基本的には上述の3つの社寺林と差異もなく、多くの植栽された人工林に囲まれながらも、これらの自然植生がしっかりした状態で保全・保護されていることが確認できました。

最後に清川村の八幡神社をみてみましょう。

40.八幡神社

海抜1,246mの大山の東斜面が、南北に流路をとる相模川の沖積地と接するところに(愛甲郡清川村)煤ヶ谷は位置する。相模川の支流小鮎川によりえぐられた地形をなす。八幡神社は煤ヶ谷・金翅の集落の北部で海抜200mの小高い小台地上となっているところにある。
八幡神社の森は小さな社殿を中心にあり、社殿の南東部には高木層の高さ15mに達するスダジイ林、南西部では尾根状地に沿ってモみりんを形成している。このスダジイ—モミ林は、高木層に優占するモミ、スダジイの他に、亜高木層、低木層、および草本層に自然植生の構成種を多くみることができる。常緑植物(ヤブツバキクラスの種)のナンテン、クスノキ、アオキ、シロダモ、アラカシ、ヒサカキ、テイカカズラ、ヤブコウジ、ジャノヒゲと夏緑植物のガマズミ、ハナイカダ、ムラサキシキブ、コマユミ、ヤマモミジ、クロモジ、コバノガマズミが生育する。この夏緑植物の多くは、自然植生の置きかえ群落として生育するコナラの二次林(クヌギ—コナラ群集他)の構成種であり、より高海抜地に生育するミズナラ林の構成種でもある。(コナラ—ミズナラオーダーの種群)
八幡神社の森は、つい最近まで多くの集落周辺に比較的普通に見られた八幡様の神社林である。しかし、急速に減少をしている現在の時点ではとびぬけて高い自然林としての評価を与えるべき植生とはいえないが、現時点において緑の自然環境の典型指標として評価され、今後相対的に価値が高くなるという点からAランクに所属させられよう。(調査結果p151-152)

スダジイ林とモミ林が混生する八幡神社は、同じような植生、すなわちスダジイ林およびイノデ—タブ群集を持つ日向薬師と同様の標高200mぐらいの所にあります。ただし八幡神社の特徴的なところは、置きかえ群落として生育する多くの夏緑植物の記述です。つまりコナラ、ミズナラ等の二次林の構成種とあるのですが、今はコナラやミズナラはすでに伐採されて残るのはその構成種の夏緑植物だけということなのでしょうか。

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