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潜在自然植生の保全林(2)

横浜02神奈川県下で宮脇さんが携わった《潜在自然植生》の防災・環境保全林を紹介する2回目は、横浜市保土ヶ谷区にある《横浜国立大学正門》の樹林です。

大学が1979年にこの常盤台キャンパスに移転したその年から苗木が植えられ、現在の森を形成しているということから、30年以上の時間をかけて成長しつつある《潜在自然植生》の森を私たちは見ることができる訳です。この樹林の端には《横浜国立大学の森》というタイトルで以下のような説明パネルが立っていました。

人間が緑と共生する環境保全林を作るため、“ふるさとの木によるふるさとの森づくり”の思想に基づき、常盤台キャンパスには南関東に固有な常緑広葉樹が計画的に植樹されています。照葉樹とも呼ばれるシラカシ、アラカシ、アカガシ、タブノキ、クスノキ、スタジイなどです。落ち葉と枯れ枝を森に戻し、土を育む、景観と環境の両立が図られています。

“ふるさとの木によるふるさとの森づくり”

地域固有の樹林《潜在自然植生》を鎮守の森から探し出し、潜在自然植生の苗木の密植・混植によって樹木の競争・我慢・共存を促す、植物生態学の原理を採用した本学名誉教授宮脇昭博士の思想です。
博士の指導の下、世界各地に植樹された三千万本以上もの木々が自然の森を再生し、人びとに安らぎと安全を与えています。本学から世界に発信された研究成果のひとつです。
常盤台キャンパスはまさにこの思想の実験場でした。本学がこの丘に移転を完了した昭和54年以来、教職員と学生の寄付と作業により苗木が植えられ、移転以前の木と相俟って現在の森を形成しています。

環境保全林は緑地機能により人びとの環境を安全に保つ林であり、次のような緑の機能を併せ持っています。
精神的機能(安らぎ、休養)
物理的機能(防風、砂防、防臭、火災の延焼防止)
生物的機能(集塵、大気浄化、二酸化炭素吸収、酸素供給)

平成17年春
横浜国立大学

graydot

こうやって書き写してみると少し引用文が長くなってしまいましたが、この樹林の植樹意図・歴史・特長・機能などが簡明に綴られており、私のようにホンモノの森のことを知ろうとする者にとっては暗記しておいてもよいほどの名文に思えます。

横浜国大01
写真は大学正門から見るまっすぐに伸びる“ふるさとの木によるふるさとの森”(左)と森の中途あたりで交わる十字路で来た道を振り返って撮ったカット(右)。植栽後30年以上の時が経過すると、樹高は20m以上となり、豊かな樹林の景観が拡がっていました。

この“ふるさとの木によるふるさとの森”については、《横浜国立大学学術情報リポジトリ》のwebサイトに詳しい資料が置かれており、ここで読むことができます。

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