蔵王の針葉樹の異変について

先日の備忘録《宮脇さんが動いた》の場合もそうでしたが、今日も半分雑誌をパラパラとめくりながら、残りの半分はTVに眼を向けていると、冬の蔵王山系観光の目玉「樹氷」になる針葉樹アオモリトドマツの葉が広範囲に枯れてしまい、このままだとスノウモンスターとも言われ、自然が作り出す珍しい景色で人びとの眼を楽しませてくれる「樹氷」にも影響が出て来るのではないかと、蔵王の人達が心配をしている・・・・とキャスターが言っているのが聞こえてきました。

常緑広葉樹を主木に、多層群落を構成する多彩な樹種の積極的な植栽により、丹沢の森の再生を考えている私にとって、せっかく育った樹木の大量の立ち枯れは決して他人事ではなく、可能性の高い事業リスクの一つとして常に考えるとともに、それの解決策までを用意しておくことが不可欠になります。そこで今日はこのTVの内容を少し詳しく紹介したいと思います。

これは「蛾が大量発生 蔵王の樹氷は大丈夫?」というタイトルのTBSテレビ2014年12月6日放送の《報道特集》という番組のなかで放映されたもの。蔵王山系の山頂付近をおおう常緑針葉樹林アオモリトドマツの葉が、タイトルにもあるように、大量発生した蛾の幼虫によって食い尽くされ、枝が剥き出しになった状態のため、このままでは枯死してしまう心配があるうえに、この被害を食い止める有効策も見あたらないと被害範囲がさらに拡大し、「樹氷」も大変なことになるのではないかいう内容でした。

番組によると、実は、今回の蔵王と同様の事例が富士山麓の山梨県側に植林された針葉樹林でも起こったことがあるそうで、この時の被害状況を調査した専門家が、蔵王と富士山麓の二つの被害の類似点を次のように話していました。

富士山麓の場合は、2001年に小さな蛾の一種トウヒツヅリハマキが大発生し、その幼虫が広い範囲で植林された針葉樹シラビソの葉を食い荒らし、およそ100haにも及ぶ広い範囲のシラビソ林が枯死してしまったそうです。この時は、トウヒツヅリハマキの天敵となる昆虫病原性糸状菌が存在することがわかって、その後は被害が拡がることなく、減少傾向にあるようですが、今後再び大発生する恐れもあるとのこと。今回の蔵王の場合も同様の被害とその拡大の経緯をたどっているようで、やがてこの蛾の幼虫の天敵が現れて、安定した状態に移行するのではないかとのことでした。

そこで、富士山麓をテリトリーとする、別のある森の植生の専門家は(因果関係はまだ定かではないが、と断った上で)自然が本来持っている生物の多様性を無視して単一の樹種の人工林の森ばかりを拡げてしまったことと、針葉樹の葉を食尽す蛾の大発生は関係あるのかも知れないと考え、シラビソ林が枯死した跡地に、いろんな広葉樹を含めた多様な樹種の植林を進めている様子を伝えながら、一つの新しい試みとして、注目されていると番組でも紹介していました。

また、蔵王の森の関係者の一人も、今問題になっている常緑針葉樹林アオモリトドマツが被害に遭っている区域は、ロープウェイを作ったり、ライトアップをしたりと、ヒトが自然に対して過度な干渉をしているような所と重なっており、これからは、ヒトの方が一歩引いて彼等と接するような態度が必要になるのではないでしょうか、と話しているのが印象的でした。

このように、自然の突然の変貌はヒトの手にはとうてい負えるものではなく、その都度ヒトは立ち止まって考えてみる、迂回する、一歩引き下がることをするなど、 謙虚な姿勢が大切だということでしょうか。

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