森づくり事業(広島県の場合・2)

県や市町村など地方自治体が行う森の再生事業のコストパフォーマンスを知ることで、私が考える丹沢の植樹ビジネスを補強したいと思って書き始めた《森づくり事業(広島県の場合)》の二回目。今日の備忘録は、総事業のなかでも特に、針広混合林のための《強度間伐(40%)》の面積とコストの関係について考えてみます。

広島事業01広島県の場合、森づくり事業は1)人工林対策、2)里山林対策、3)県民意識の醸成という三つの柱からなり、それぞれの予算は左に示すようなボリュームになっています。そして1)人工林対策は以下の三つの事業から成り立っています。

間伐による人工林の健全化(間伐事業)
● 強度間伐による針広混合林化(針広混合林化事業)
● 被害木の伐倒整理等(被害木伐倒整理事業)

私が詳しく知りたい人工林を針広混合林へと誘導する事業は、上記の二番目にあたりますが、この事業が人工林対策の全体に占める割合は、左のグラフで示すように残念ながら、1%以下という非常に小さいものです。

おそらくですが、その理由は、放置された人工林の荒廃を食い止め、森林環境の劣化を防ぐ間伐事業こそが、優占すべき緊急の課題であったこと、第二に対象が民間林であり、スギ・ヒノキを価値のある森林資源としてみる限り、間伐強度40%以上の伐採を要する針広混合林化を積極的に受け入れることは容易ではないことなど、複雑な事情が考えられます。

また、人工林を針広混合林へと誘導する手法については、間伐した空地に、その土地本来の広葉樹を主木として高木—亜高木—低木—草本の多層群落を形成する多くの樹種の苗木を植栽することで、20〜30年後はしっかりした強い根を張った広葉樹の森を作るという《宮脇方式》ではなく、間伐後は天然更新を期待する(この方法は、現在全国で実施されているほぼ共通のものですが)自然に任せることにしているそうです。

さらに知りたかったことの一つである《強度間伐(40%)》で間引きされた樹木の処理についてですが、事業対象地が民有林であることから、樹木の所有権はその所有者にあり、自治体が勝手に処理する訳にはいかないらしく、従って、間伐後はそのまま放置した状態で事業は完了するようです。宮脇さんによれば、間伐し倒した木は、枝葉を落として土砂の流出防止になるよう横置きし、やがて自然に還ってくれるのを待つのがいいとのことですが。

以上のように、人工林を針広混合林へと誘導する事業と言うには、あまりにもわずかな予算規模で、自然の経過に頼るだけの天然更新にまかせるという手法も消極的であり、対象も民有林であることから、おそらく多くの制限が加わったようにも思えます。にもかかわらず、広島県の報告が私にとってありがたいのは、コスト(予算)と実施面積の年度毎の一覧を見ることができ、事業パフォーマンスを知ることができることにあります。

広島02
上の図は《強度間伐(40%)》の針広混合林化事業2007 年〜2013年まで7年間の予算と実施面積一覧です。間伐1ha当りの金額は年度によって上下していますが、主に立地や作業条件などの差違によって生じたものだと思われます。

2014年11月08日の備忘録《人工林を伐採する費用を調べてみる》のなかで、1haの針葉樹を伐採(全伐)する場合の伐採+抜根料金をネット上で調べてみたことがあります。

a)1haの広さに植林したスギ450本の買い取り価格が約100万円(2,200円/1本)
b)300坪(約1ha)の20〜30年のスギ林を伐採+抜根で約350万円
c)3,000坪の植林を伐採+抜根で1本当り10,000〜20,000円

上のa)からc)の三つの例を載せてみたのですが、抜根料を除くとどの事例でも伐採料はおよそ5,000円/1本ほどとなり、他の資料でも「一人が一日30本を150,000円で」(国土審議会 持続可能な国土管理専門委員会)ということなので、5,000円/1本の妥当性を裏付けているようです。

それでは、広島県の場合はどうでしょう。上の表から1ha当りの金額は平均で393,000円と出ています。40%の間伐は1haあたり何本の木を倒すことになるのかは、わかりませんが、上のb)から推測すると、まず、350万円=伐採料1,500,000円+抜根料2,000,000円と仮定します。それから5,000円/1本の伐採料合計が1,500,000円とすると、1haには300本のスギがあったことになり、その40%、つまり120本を間伐し、木は置き去りにすると、間伐料は120本×5,000円=600,000円。
広島県の場合は平均で393,000円なので、30%ほどシミュレーションより安価ですが、針葉樹の本数が少ない可能性も考えられ、これも想定の範囲内なのでしょうか。または、近年伐採料が下がる傾向にあるのでしょうか。

この続きは、広島県が発表した《森づくり事業》中間報告と今後の指針についての紹介です。特に、《森林整備事業を貨幣価値に換算する》という興味深いことがらについての報告です。

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