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丹沢の植樹事業と自然災害

これまで二回に分けて植樹事業が生み出す本来の事業利益とはまったく別次元で発生するであろう付加価値について、その可能性を紹介してきました。今回はこれとは正反対の事業リスクについて、とりわけ自然を相手にする事業には避けて通ることの出来ない自然災害リスクについて考えてみようと思います。

山や森林での自然災害といえば、すぐに思い浮かべるのは、豪雨や地震などによる土砂災害。特に山地の崩壊が下流の渓流での土砂流出を招くという悪循環は(最近ではこれも地球温暖化の影響なのか、気候の変動が極端になって)日常茶飯事といっても過言ではないレベルで、丹沢あたりでも目にすることがあります。これら山林被害をもたらす自然災害は大きく二つに大別されます。一つは、大地震による大規模な山地崩壊。もう一つは梅雨時から台風シーズンにかけて心配されるお集中豪雨による山・がけ崩れ。丹沢でも記録が残る1923年の関東大震災以降、たびたび被害を被っており、その記録一覧を『丹沢の自然再生』(日本林業調査会  2012年刊)で見ることができます。

地震に強かった天然林

丹沢の自然再生本関東大震災は、東京での被害の大きさが語られていますが、『丹沢の自然再生』によると実は相模湾北部が震源地であったため、東京の震度6に対して神奈川県では最大震度7*と推定されているように、横浜都市部はもちろん、丹沢の山間部でも甚大な被害にみまわれました。その当時の丹沢を撮った写真をみると、山肌が崩落で白くなっているのが、いたるところで確認できます。都市部で火災や建物崩壊、津波などの複合災害が発生していた時に、山間部は山地崩壊に襲われ、その崩壊数は約9万カ所近く、崩壊面積は8,600haに達したそうです。加えてその2週間後の大雨のため、「崩壊による流出土砂があらゆる河川を埋め尽くした」と報じられるほどでした。

今日では震源地は神奈川県西部の松田付近の地下25kmで発生した断層すべりとその10秒後に三浦半島地下で起こった第2の断層すべりによるものであることがわかっています。この2つの連続した地震により、この2箇所を中心に縦70km、横130kmの長方形の範囲で、最大10mほどの地すべりがあったと推定され、さらにM7を超える余震が5回発生したことも明らかになっています。(『丹沢の自然再生』p33より)

注目すべきは当時の報告の中で、「幼齢の造林地および伐採跡地で崩壊が多く発生し、老壮齢の天然林には少なかった」(同書p29)と記録されていることです。一般的な「老壮齢の林」ではなく、「天然林」つまり丹沢の場合は標高800mまでだと常緑広葉樹林が地震に強かったという訳です。宮脇昭さんの理論と実践がここでも裏付けられているようです。また指摘されている「幼齢の造林地および伐採跡地」の弱さは最大のウィークポイントなので、被害を最小限に留めるために、さまざまな工夫を考えることが必要になります。

2,000mm超の丹沢の年間降雨量

以上、数百年周期で発生する地震のような長周期的な大規模災害に対して、毎年または数年ごとに繰り返される台風などによる豪雨被害があります。最近では丹沢でも防災のための土木対策が進み、人工林も大きく生長したことにより、以前に較べ土砂災害も減少傾向にあるとはいえ、丹沢の自然環境が豪雨の影響を繰り返し被る立地条件にあることを押えておく必要があります。

丹沢の降水量は平野部に較べて2~3割多く、年間2,000mmを超える。1972年の豪雨はたった3日間で500mm、2010年の台風は丹沢湖に495.5mmの雨を降らせたことで、森林被害や土砂災害を引き起こしている。

丹沢山系には標高1,500mを超える山々が連なり、急峻な斜面と深い谷によって起伏の激しい形状をしている。これは丹沢が海底火山からの噴出物が堆積し隆起したことにより生まれたものであり、加えて長い間の降雨により浸食を受けてきたためでもある(現在でも丹沢は隆起を続けているという)。

丹沢の斜面は土壌表面が浸食されたため、樹木は有機物に乏しい薄い土壌の上での生育を余儀なくされている。このため、豪雨や強風により表層の土壌ごと樹木が崩落してしまうような森林被害も見られる。反面、わずかに点在する緩斜面の表層には富士山や箱根の噴火に由来するローム(火山灰)の厚い堆積層が浸食されずに残っているところもあり、そこではブナ林などの自然林の生育がみられる。

丹沢の地層に眼を向けると、地殻変動の影響を長く受けてきたことで、地下には亀裂が発達し、地震や豪雨に対して弱く崩れやすい性質を持っている。

以上のような性質を備えている丹沢山系の土壌だが、近年の土砂災害の減少にもかかわらず、例えば中川流域では年間で2,000㎥/1k㎡と、依然として土砂流出は減っていない。

これらは『丹沢の自然再生』の記述を要約したものですが、丹沢で植樹事業を志すものにとって、森林被害、土砂被害で被る事業リスクはしっかりと踏まえながら、その対処法についても確立しておくことが不可欠になります。

*後日談:この備忘録を書いた後で、気がついたのですが、Asahi Shinbun The GLOBE aug16号では「火山と人類」を特集しており、この自然災害はいつか必ず起きるとして、次のように結論めいたことが印刷されていました。
 
名古屋大学教授の山岡耕春さんは、(火山の噴火で成層圏まで舞い上がった噴煙が長期間にわたり太陽光を遮ってしまうので)「気候が寒冷化して世界的に食料が不足する。巨大噴火で経済的にも打撃を受ける日本が食料を買うのは難しくなるだろう」と話す。何人かの火山学者に対策を尋ねたが、海外脱出に備えて英語の勉強をしておくこと、円の暴落に備えて外貨預金をすること、だった。
  
とのこと。この警告は奇しくも、著名?投資家ジム・ロジャーズのそれと同じようなフレーズなのでした。彼は次のように警告しています。
  

「アベノミクスは、私のような投資家には最高の政策ですよ」「自らの通貨の価値を下げる政策は、かならずしっぺ返しを喰らいます。結局、一部の大企業や投資家に利益のあることをしているだけ。日本そのものは破滅に向かっているのです」「いち投資家の立場を離れて言えば、安倍総理に一刻も早く退陣してもらうことが、日本が立ち直る最良の解決策です」「衣料であれ食料品であれ、物価が上がって、結婚して子育てを考えるような経済的余裕がない若者が増えている」「株価が上がり、それに舞い上がる人々がいる一方で 人口減少に歯止めがかからず、借金は膨らむばかり。日本の若い人に言えることがあるとすれば、『外国語を覚え、日本株を持って、国外に逃げ出したほうがい い』ということですね」「いまから10年、20年経って日本人の皆さんは気づくでしょう。『安倍総理が日本を滅ぼした』と」(週刊現代)

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