ポット苗から育てる森、百年後の姿5

前回に続き、自然遷移に比べ短い時間で潜在自然植生の森をつくる宮脇方式による植栽の事例を紹介します。(と、いっても実は今年の1月の備忘録にも使った原稿ですが、今回は視点を新たに対象に猛迫してみるつもりです)

事例2:横浜市北部第二水再生センターの環境保全林(1983〜)

事例2は横浜市の沿岸埋め立て地にある下水道処理施設の環境保全林。植樹して今年で32年を迎えることになります。その場に訪れると、常緑広葉樹の樹高は敷地のなかの4-5階建ての建物と同じほどあり、20メートルをゆうに越えているようです。

水01-02

 

この環境保全林は敷地と道路の境界に横幅は事例1の二倍程あるのでしょうか、幅7-8メートルほどのマウンドの形状になった盛り土が数キロメートルにわたり(確認できただけでも、タブノキ、ヤマモモ、カクレミノ、トベラなどの高木—低木による樹種構成で)まっすぐと続いています(写真01)。さらに敷地内に廻ってみると、北側にあたるためか枝葉の勢いがなく美観に欠ける印象がしました(写真02)。この印象は宮脇方式の植栽にはついて廻るもののように思われるのですが、その原因は《混植・密植》にあるといえます。自然遷移だと数百年の時間がかかる極相林の再生を、極端に言ってしまえばわずか百年で実現しようとするこの手法に従えば、樹木はお互いに競争しながら、ただ一方向だけ空間が拡がる上に上に(端の樹木だけはそれに加えて、外側に)伸びることしか出来ない訳で、その結果一本一本の樹木は幹が細くなり、こんもりとした枝葉をつけることなく、樹林全体が貧弱に見えるのだと思われます。

水3次に写真02の反対(道路)側に行くと、太陽の光を十分に浴びて、そのうえ遮蔽物もなく空間が拡がっているために枝葉の伸びもよく、この方向からは豊かな植栽に見えました(写真03)。

左の写真03を見ると、太陽の光を浴びた緑の枝葉が歩道の半ばまで張り出し、林床には常緑広葉樹の落ち葉が所狭しと積み重なっているようで、土壌の微生物を含めた豊かな森の生態系が生まれていることが分かります。ただ歩道上を枝葉が覆うようになると、人の手を入れないままで放置する訳にもいかず、通行の妨げになる場合は刈り取られることになりそうで、少し残念な思いもします。

水4-5

 

この環境保全林を側面から少し近づいて見たのが写真04。ご覧のように植樹後約30年の奥行き7〜8mほどの樹林は高さだけは見上げるほどに伸びているのですが、幹もまだまだ細く、発展途上の様子です。更にもう少し近づいてみると(写真05)数十cmから1mほどの間隔で樹木は密に並んでいるのが分かります。概して林床の外側の樹木は大きく成長しており、内側のものはすでに劣勢にあるのでしょうか。外側の幹の逞しさに較べると、貧弱なようです。また、林床に目をやると、常緑広葉樹の落ち葉に覆われて、森の生態系ができあがりつつあるのがわかります。

これから50年、100年後、横幅わずか8m足らずの数km続く潜在自然植生の森がどういう変化を見せながら成長するのか、ぜひとも記録に残していただきたいものです。

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