ポット苗から育てる森、百年後の姿6

いのちの森を生むシリーズ《ポット苗から育てる森、百年後の姿》の4〜5では、近くにある宮脇方式の植栽事例を紹介しましたが、これらは共に横幅がわずか5〜8mほどの大学や施設の環境保全林でした。この二つの環境保全林の場合は、宮脇さんの持論である「幅が1mでもあれば、立体的な樹林は十分できる」ことを実証してくれる事例でもあったのですが、もっと大きなスケールで混植・密植すると、その数十年後はどんな姿になるのでしょうか。

ぜひとも広い面積を活用した潜在自然植生の森の事例を見てみたいものですが、宮脇さんの『いのちの森を生む』(日本放送出版協会 2006年刊)の口絵にその格好の写真が紹介されています。

新日鉄の森

 
写真は『いのちの森を生む』に掲載された現在の新日鐵・大分製鉄所の森。写真のキャプションにはそれぞれコピーが添えられている。
◎写真左:高所より製鉄所の森を見る。高さ10mを超える防災・環境保全林としての機能を果たしている。
◎写真右:森づくりをはじめて30年以上が過ぎた。自らが最初に手がけた製鉄所の森を歩く。

写真左のように、上空から見ると、鬱蒼と茂る常緑広葉樹の森が遠くまで拡がっています。混植・密植の成果をここでも確認することができますが、注目したいのは、右の宮脇さんが歩いている樹林の中の写真右です。

上空からの俯瞰写真だと神宮の森と同じような森になる印象がするのですが、樹林の中にわけ入ってみると、そこは神宮の森と違って、宮脇さんが歩いている道があらかじめ規則的に確保されているようです。目視だとおそらく4〜5mほどの道幅でしょうか、ここでは混植・密植されたポット苗は光と空間のある方へある方へと伸びていくため、道ばたの幹や枝は斜め上方向に少し傾きながら成長しているのがわかります。そして枝葉が斜め上に10mも伸びると、道路をはさんで成長する木々はお互いにぶつかり合ってしまい、上空から見るとまるで1㎥の隙間もないほどに木々はビッシリと重なり合った森の様相を示し、実は樹林の中では道路が通っているなどとは、とても想像できないという訳です。

しかし、東京ドームが何個も入るようなスケールの大きい面積に植樹するとなると、碁盤の目のような規則正しい、横幅5mほどの道を確保することが不可欠になりそうです。

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