植樹が生み出す公益額を算出する

ビジネス的な手法で植樹事業を行う場合、その事業収益とは別に、植樹それ自体がもたらす公益的な便益が考えられます。例えば、植えた樹木が生長し森となり、それらの木々が光合成により二酸化炭素を固定し、酸素を生み出すことも公益的な便益効果の一つになります。この考えを掘り進めていくと、ひとつは《カーボンオフセット》の領域にたどり着くことになります。二酸化炭素を吸収・固定する便益以外にも、その多くは水の分野になりますが、下記のような働き(効用)も発揮されるようになります。

  • 河川に流れ込む水量を調節し、洪水を緩和する働き
  • 雨水を林床に蓄え、ゆっくり流出させる働き
  • 雨水の汚濁を取り除き、きれいな水に浄化する働き
  • 表土の流出を防ぐ働き

ところで、この備忘録では森の水源涵養機能や山地保全機能、環境保全機能など森林の公益的な効用について考えるために、広島県が実施している森林整備事業を例にとって投入された税金 VS 貨幣価値に換算した効用額について、その事例を《森林整備事業を貨幣価値に換算する》として三回に分けてまとめてみたことがあります。その時に使った広島県発表の効果項目と効果量(金額)の一覧表がこれです。

広島県貨幣換算

これを見ると、投入された税金額に対しておよそその5倍近い貨幣に換算した価値があったようになっています。今になって覚えていることは、その効果量を何やら複雑な数式で貨幣価値に換算したことを、広島県の資料をそのまま写して載せてしまったということぐらいなのですが、その基礎となっている考え方は、広島県が独自に発明したものではもちろんなくて、林野庁がまとめた《林野公共事業における事前評価マニュアル》というものから持ってきています。

では、この事前評価マニュアルはどのような考え方で森林整備事業から新しく生まれる便益を数値化し、貨幣価値に置き換えようとしているのでしょうか。マニュアルに沿って例をとりながら見ていきたいと思います。

このマニュアルでは水源涵養便益を 1)洪水防止便益  2)流域貯水便益  3)水質浄化便益の三つに分けており(これは広島県が作った上記一覧表の  a)・  b)・  c)に該当するものですが)、ここでは 1)洪水防止便益について解説してみます。

マニュアルは最初に洪水防止便益が意味する所を次のように語っています。

1)洪水防止便益

降雨によって地表に達した雨水が当該地区の土壌に浸透或いは蒸散せずに河川等へ流れてしまう最大流出量について、治山事業により森林が整備された状態と整備されない状態を比較し、森林が整備されることによる森林内からの最大流出量減少分を推定し、この減少する最大流出量を治水ダムで機能代替させる場合のコストを洪水防止便益の評価額とする。なお、事業内容に応じて、事業対象区域分と保全効果区域分のそれぞれの便益について算定し、合算するものとする。(p8)

上の記述を図で示し、その便益の評価額を算出するための数式を併せて載せています。

上図のグリーン部が示す部分=洪水流出量の差違を出すために、この複雑な数式に広島県は具体的な数字に置き換えて、下のような解を出しています。

洪水緩和効果

(この稿未稿)

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